美人の存在感は素敵だ。そこにいるだけで、場の空気が心地よくなる感じがする。特に目立ったことをするからではないのに無視できない存在感がある。

 何人かの集いでも発言ひとつひとつが大事にされるような力を持っている。皆が発言に集中したくなる力だ。

 他人の話をしっかり聞いて、理解して、考えて発言する。だから先に発言した人も、次に話す美人の話をきちんと聞こうという気持になるのだろう。存在感とは声の大きさではなく、聞く姿勢から生まれるのだなと思う。

 一生懸命、人の話を聞いている瞬間。これは話していて気持いいものだ。美人と話していると話す声の大きさを調整しやすい。その表情だけで、もう少し大きく話してとか、声が大きすぎるよというサインが伝わってくる。

 そして、自分が話し始めるタイミングが実にうまい。相手が話し終わって、ほどよいタイミングで話し始める。一生懸命聞いているから、その「間」のつくり方が非常にうまいのだ。

 会話の間のうまさは「美人のもと」をつくるように思う。

 食事をしたり、お茶を飲んだりしている集団がいる。そこで「え、なになに」「もう一回言って」と大声で何度も言う人がいる。他人が話している途中に「あのさー」と始める人がいる。他人が話していることを理解しようともせず、わかったふりをして相槌だけ打っている人がいる。瞳孔が開いたまま笑っている人だ。周囲は「またか」という表情であるが、本人はそれにも気づいていない。

 それまで存在感がなかったのに無理矢理つくられた存在感である。邪魔な存在感である。

 間が悪い。他人の話をきちんと聞いていないから、気持いい間が取れない。会話の大事なタイミングでメールを始めたり、トイレに立ったりして、話の流れもつかめていない。たいてい皆が席を立とうとした瞬間に別の話を始めたり、お会計の時にいなくなったりする人だ。「美人のもと」が減っているように見える。

 上手に会話するというのは上手に話すことだと思われがちであるが、実は聞き方である。しっかり聞く気持を持っているだけで相手に合った「間」をつかみ、そして美人が持つ存在感を手に入れることができる。