東京電力の賠償原資を確保する、という文脈で「発電と送配電を分離すべき」との議論が再燃している。だが、送配電だけを先行して売却すると賠償スキームや安定供給の混乱もありうる。理想型は、安定供給部門を一体とした一時国有化である。その上で送電事業は、東電から分離させることはもちろん、他電力会社の送電部門も統合して、全国で一体運営を目指すべきだ。すると、地域間の電力融通や自然エネルギーの拡大が可能となる。

公共性を求められる送電業務
既存の電力会社には任せられない

 発送電分離は必ず実現させるべきだ。その根拠は、「規制緩和」や「自由化」ではなく、送電線の“公共性”にある。

 送電線は、高速道路と同じように、利用者すべてに等しく開かれていなければならない。必ずしも国営である必要はない(むしろ国営でない方がよい)が、“公共的に”使えなければならない。それに対して、発電や売電は利潤を追求するビジネスである。「公共的なサービスを提供する存在」と「営利を追求する存在」は、そもそも別の主体であるべきだ。

 ここで、一枚の絵が思い出される。ニューヨークの空を、配電線がクモの巣のように覆った様子が描かれている。その昔、電気を売りたい人が自分でおのおのに配電線を引いた時代の様子だ。

 そうした「電気を売りたい人が送配電をそれぞれに設置する」という非効率的さを避けるために、日本でも海外でも、かつては一定規模の地域独占が認められた。一つの電力会社が一定の地域を独占し、発電・送電・配電までを一体として供給した方が「合理的」だったからだ。日本でも第二次世界大戦後に、10地域をそれぞれの電力会社が独占する現在の体制ができあがった。