“安全宣言”を打ち消すために
ストレステストを持ち出す菅首相のあざとさ

 菅直人政権は、7月6日、すべての原発を対象にストレステスト(耐性試験)を実施すると発表した。

 既に、定期検査中の原発に対して“安全宣言”を発していたから、これは重大な方針転換である。

 首相は、海江田万里経産相が6月18日に、停止中の原発の再稼動を要請したことに対して、翌19日のネット対談で「私もまったく同じ考えだ」と明言していた。

 首相と経産相の間でどんな協議が行われたか明らかではないが、再稼動要請は間違いなく首相の意向だろう。

 だが、首相は“脱原発”を掲げて延命を企てようとしているので、“安全宣言”や“再稼動宣言”では、海江田氏や経産省を前面に立てて自分は逃げようとする。

 ネット対話についても「再稼動を明確に支持してしまい、本人は翌日へこんでいた」と首相周辺が証言している(6月25日朝日新聞)。

 首相がこれを打ち消すために飛びついたのが、ストレステストの実施であろう。

 ストレステストの実施に反対する人は少ない。それを見込んで唐突に持ち出すところがあざといのである。

 もっと早く、事故調査・検証委員会を立ち上げ、その活動報告を得ながら新しい安全基準を策定、そしてそれに沿ってストレステストを実施すればよかったのではないか。首相はなぜ「浜岡は特別」としたのか。なぜ“安全宣言”や“再稼動要請”をしたのか。はしごをはずされた海江田大臣の心境は察して余りある。

 そして政府は11日、ストレステストに対する統一見解を発表したが、なぜ最初からそうしなかったのか。