米FRBが秋から「ドル余り」解消へ、金融市場混乱と円高の懸念

 6月14日、昨年12月と今年3月に続いて、米国の中央銀行である連邦準備理事会(FRB)が0.25ポイントの利上げを実施した。2015年以来4回目の利上げに加え、FRBは3回にわたる量的緩和策(QE)を通して買い入れた債券残高を、年内に削減し始める方針を示した。これは、FRBが金融政策を正常化し、金融市場でだぶつくドル資金を吸い上げ始めることを意味する。FRBは金融政策の正常化に向けて大きく舵を切ったことになるが、米国の政治・経済には先行きに不安材料が残る。一方で世界経済にも新たなリスクを抱えた。

FRBのバランスシート圧縮
「過剰なドル」に守られた世界経済も転機

 今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)のポイントは、今年2回目の金利引き上げを実施したことに加えて、FRBがバランスシートに計上してきた資産(米国債や住宅ローンを裏付けとする証券など)の段階的な削減に向けて行動指針と計画を公表したことだ。

 このバランスシートの圧縮は、まず、FRBが保有してきた債券の償還期限が到来した分については、再投資を減らすことから始める。イエレン議長は、14日の会見で比較的早い時期に、この取り組みを始める意向を示した。

 2008年9月15日のリーマンショックの発生後、米国経済は崖から突き落とされたかのような経済危機に陥った。2008年12月にFRBは事実上のゼロ金利政策を導入し、その後、3度にわたる量的緩和策=QEを実施した。

 この結果、FRBのバランスシートの資産総額は、危機前の8000億ドル程度から約4.5兆ドルに膨れ上がった。大規模な資金供給によって金利は低下し、米国の金融機関や家計の資金繰りが改善した。米景気は2009年6月には底を打ち、そこから8年間の景気拡張が続いている。