「気にしていないふり」をすれば、気持ちは静まる

新著『忘れる力』を出版した臨済宗 全生庵住職の平井正修氏が、刺激にさらされ、ストレスに苦しむビジネスパーソンに、波立つ心を穏やかにする方法を指南します。今回教えていただくのは「気にしていないふり」。知らなければよかったことを知ってしまったがゆえに、心の平穏が乱されることはよくあります。そういうときは、「気にしていないふり」を演じるのが一番です。

頭を悩ます判断や決断、
最適なものを選ぶ指針とは

 私たちは日々、たくさんのことを判断しています。

 朝ごはんは何を食べようか、何を着て行こうかといった些細なことや、学生であれば進路や就職先のことを決断します。

 働きはじめたら業務の取捨選択や進め方、社運をかけたビッグプロジェクトでの方向性など、「これを選ぶとどうなるのだろう……」と、少し先のことから遠い将来のことまで、毎日さまざまなことを悩み、決断しています。

 あるいは、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで買い物をする時、どの商品を買うか買わないかを即座に判断しています。

 買い物でさえこれですから、わずか一日の間でも、かなりの数の判断を下していることになります。

 そして今という瞬間は、あなたが生まれてこのかた、数えきれないほどの判断や決断をくり返してきた結果です。

 さて、そうした判断をする時、いくつかの選択肢の中から、いかにして最も適したものを選ぶのか。

 一つの指針は、「欲」に惑わされないこと。つまり、あえて欲を忘れようと意識することです。