支援に行った人だけでなく
残った人もたいへんな思いをしている

 震災支援で職場の誰かが被災地に行く。被災地に家族が住む間接的な被災者がいて、帰省するために職場を離れる。そうした場合、残った人はその人たちの仕事を引き受けることになります。

 たとえば保健師さん。それまで5人で500世帯を担当していたとします。1人当たりの担当は100世帯です。仮に2人の保健師さんが被災地に行ったとすると、200世帯を残った3人でカバーする必要に迫られます。

 もちろん、被災地で過酷な状況に直面しながら働く方々は、たいへんなご苦労をされたと思います。しかしながら、残った人たちも普段よりもはるかにたいへんな思いをされたと思うのです。

 震災支援に人を出している自治体、病院などに行くとき、私は被災地から戻った人だけではなく、残った人にも話をお聞きするようにしています。

「たいへんでしたね」

 私の問いかけに対して、最初は「いえ、私は被災地に行っていませんから……」と言葉を濁す方が非常に多い。何度か尋ねて、ようやく重い口を開いてくださいます。

「実はたいへんだったんです。私もずっと休みが取れなくて」

 残った人たちは、被災した方や支援する方に対して「たいへんだな」「気の毒だな」「頑張ってほしいな」という感情をお持ちです。これは嘘偽りのないものだと思います。