サンタモニカになぜ存在するのか?

 アメリカで最も歴史があるランド研究所に移籍して、1週間が過ぎた。建物も事業領域もあまりにスケールが大きすぎて、まだ全貌を理解できたわけではない。ただ、この研究環境の素晴らしさに敬服する。規模も影響力も世界最大級と言われるシンクタンクに身を置いて1週間。国としてシンクタンクを持つ意義とシンクタンクが機能する条件について思ったことを書いてみる。

 まず場所のよさ!ランド研究所は世界一立地がいいと言われる。この立地の良さの背景に「国としてシンクタンク」を持つ意義がある。“政府から離れ、独立した立場で政策を提言する”という意義だ。

 アメリカのシンクタンクの所在地というと、首都ワシントンDCを連想する人が多いと思う。ブルッキングス、CSIS、外交評議会等ほとんどの有力シンクタンクの本部はDCにある。ところが、ランドの本部は、全米でもあこがれの的のビーチシティ、サンタモニカの一等地だ。観光地でもあるサンタモニカビーチからワンブロックしか離れていない。そして広大な敷地にビーチの喧騒を離れて静かに密かにたたずむ。

 ランドがサンタモニカに設立された経緯は色々あるが、本拠地としてここを動かなかった理由が興味深い。ランドの幹部とカフェテリアでランチしながら懇談した時の話だ。私は「サンタモニカは気候もいいし、気にいった。だけどなぜ最大の顧客である政府に近いDCに行かないの?」とストレートに聞いてみた。

 幹部は「ワシントンにも支所はある。ワシントンは今でも最大の顧客だ。だから仕事はしっかりもらう。でも政府やロビイストの影響は受けたくない。独立した立場で政策を立案することがランドの理念であり、だからランドに仕事が来るのだ。だから離れたサンタモニカにいるのだ。逆説的だが、政府から遠くにいて、政府の影響力から独立しないと政策にインパクトを与えられる客観的で影響力のある仕事はできない」と自信を持って答えてくれた。