先週、ロンドンでの暴動が大きく報道されました。よく考えると今年は、エジプトなどの中東の独裁国家で暴動が起き、欧州の都市では財政支出削減に反対するデモが頻発し、イスラエルでも8月に入って生活費高騰に抗議する史上最大のデモが発生し、極めつけでロンドンでも暴動が起きるなど、暴動やデモが頻発しています。ある意味、米国で増税に強く反対する保守系のティーパーティ(茶会)も、静かなデモと言えるかもしれません。

フリードマンの主張

 このように今年に入って暴動やデモが世界中で頻発する本質的な原因は何でしょうか。米国ニューヨーク・タイムズのコラムニストであるトーマス・フリードマンが興味深い主張をしています。

 フリードマンの主張を要約しますと、グローバリゼーションとIT革命の進展がその背景にあります。

 グローバリゼーションとIT革命の進展により、世界は“connected”から“hyper-connected”へと進化しました。それに伴って、これまで先進国で中流階級と言われる人々やマイノリティが担ってきた仕事は、機械、コンピュータ、ロボット、途上国の能力ある労働者に取って代わられるようになりました。

 それは、先進国である程度の生活レベルを維持するためには、個人はもっと生産性を高めたり、高い技能を身につけなければならなくなったことを意味します。いわゆるルーチン・ワークと言われる仕事ほど先進国ではなくなりつつあり、格差の拡大や就業機会の減少など、かつての中流階級を巡る環境は厳しくなっているのです。

 しかも、政府は、かつては社会福祉などの財政支出を増大させることで中流階級やマイノリティの不満を抑えることができましたが、今や巨額の財政赤字を抱える中で、逆に財政支出を削減せざるを得なくなり、それらの人々の窮状を打開することが難しくなりました。

 当然、中流階級やマイノリティの怒りは増大する一方となります。しかも、グローバリゼーションとIT革命は、同時にそうした人々の力を大きく強め(“super-empower”)ました。SNSやスマートフォンが普及したことで、一般庶民でも環境変化への怒りを広く世間に訴えられる位に発言力を持ち、社会の秩序や伝統的な権威に挑むことも可能となったのです。デモの波及・拡大などの“庶民の怒りのグローバル化”も進みつつあります。