不安は瞬く間に伝播する。欧米債務問題を引き金としたリスク資産からの逃避の動きは世界を駆け巡り、同時株安を引き起こした。市場はその後、落ち着きを取り戻したかに見えるが、先行き不安の根は深い。欧米、新興国それぞれが構造問題とジレンマを抱え、抜け出すのは容易ではない。世界経済は複合危機に陥っている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小栗正嗣、河野拓郎、竹田孝洋、前田 剛)

欧米のソブリン危機がマーケットを襲い、世界経済を揺るがしつつある。エコノミストへの緊急アンケートを基に、2012年にかけての景気、株、為替の動向を読む。

2011~12年最新予測
景気、株、為替はこうなる!

「世界のパラダイム(物の考え方や枠組み)が大きく変化しているなかで、これまで先送りしてきた問題が一気に噴出している」(櫻井祐記・富国生命投資顧問社長)

 2008年のリーマンショック以降、軒並み低成長に陥った日米欧の先進国と、高成長にかげりが出始めた新興国。ギリシャ危機や米国債格下げで露呈した欧米の財政問題。過熱する新興国のインフレ。不透明さを増す世界経済の先行きを、エコノミストはどう見ているのか。

 11年、12年の日本、米国、ユーロ圏の実質経済成長率はいずれも、10年の成長率とほぼ同水準もしくはそれを下回ると予測されている。

 日本は、先頃発表された4~6月期の国内総生産(GDP)の速報値が、物価変動の影響を除いた実質で0.3%減、年率換算で1.3%減となった。東日本大震災でサプライチェーン(製造から販売までの商品供給の連鎖)が寸断された自動車や電子部品の落ち込みが響いている。

 11年下期以降12年にかけては、サプライチェーンの復旧や震災の復興需要の本格化による内需拡大というプラス要因はあるものの、円高、電力供給不安、欧米のソブリン危機で世界経済が減速し外需が下振れするリスクがあることがマイナス要因となっている。11年はマイナス成長になるとの見方もあり、12年も高くて3.1%の成長にとどまる見通しだ。