「地球に優しくて、オトクなんです!」満面の笑みでタレントが声を大にすると、観客席からは拍手と歓声が沸きあがる。すると電話番号の案内が画面いっぱい表示され――。

 震災以降、注目が集まる太陽光発電がついにテレビ通販に登場した。タレントが商品を紹介し、その売上を競う日本テレビの人気番組だ。深夜帯がメインだが、売上上位に入った商品は昼間の時間帯の特別番組でも紹介される。

 その番組で5月に販売をスタートしてから注文が殺到、無料の見積もり依頼は、わずか3ヵ月で1000件に達した。実際に成約する割合も半数以上と、通常の成約割合が1~2割であるのに対して圧倒的に多い。

 この太陽光発電を販売するのはソーラーフロンティア。昭和シェル石油の子会社で、石油が主力の老舗企業だが、じつは「脱・化石燃料」を掲げ30年以上、太陽光発電の研究を重ねてきた。

 太陽光パネルは素材によって種類が異なるのだが、現在の主流はシリコンを使ったもの。対して同社はシリコンを使わず、銅などの化合物を組み合わせた「CIS」というタイプだ。シリコンタイプに比べて低コストで作れるのにも関わらず、発電性能も優れ、太陽光の大敵である影にも強いので「次世代型」と評される。

「テストマーケティングのつもりであまり期待はしていなかったが、想定外の売れ行き」とホクホク顔だ。

 人気の秘密はなんといっても値段の安さだ。

 出力2.4kWで、パネル以外に必要な機器と設置工事費込みで105万円。相場は1kW当たりおよそ55~60万円なので、驚くほど安い。家庭の使用電力を太陽光発電で賄い、余った電力は売ることで、4人家族の場合、光熱費が年間8万円節約でき、初期投資は12年で回収できるという。

「どれだけ安く消費者に提供できるかを優先し、パッケージ商品を作ってみた」(ソーラーフロンティア幹部)。通常、太陽光発電は屋根の形状や日当たりによって設置量を変えるオーダーメード。それを今回は、設置量を2.4kWに限定し、設置工事会社や機器調達を一本化することでコストを抑えた。加えて同社は、今年、宮崎県に世界最大級の規模となる900MWの工場を建設。自動化を徹底させることで24時間生産を可能とし、大量生産でさらなるコスト削減に努めた。

 太陽光発電といえばシャープや京セラ、三洋電機などの電機メーカーが主流。彼らは発売から10年以上かけ強固な販売代理店網を構築している。それに対して、販売代理店はわずか200社(店舗数では2000強)とまだ少ない同社には、「いろいろな販売チャネルを開拓する必要があった」(同)。ただ、後発であるがゆえ逆にしがらみがなく、自由に販路を開拓できたため今回のテレビ通販が実現したとも言える。

 他メーカーを扱う販売店からは「あの価格で大きく宣伝され、比較されると厳しい」「価格破壊の引き金になるのでは」と、早速けん制する声が上がっている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)