ワールプールのサプライチェーンは、全米4大家電メーカーのなかで第5位と揶揄されるほど、のろまで、身内の営業からも「営業のお荷物」と呼ばれていた。この汚名を返上すべく、数十億円という大規模投資を決定し、サプライチェーン再建プロジェクトに乗り出した。

今日、ワールプールのサプライチェーンは、精度の高い需給予測、適正な在庫水準、スピードと効率を実現し、適切な製品を、適切なタイミングで、適切な場所に供給している。ワールプールはわずか4年足らずで、この改革を成し遂げた。このプロジェクト・リーダーがその軌跡を語る。

サプライチェーンは「営業のお荷物」

 2001年5月3日、ワールプール・ノースアメリカのリーダーシップ・チームで、ある投票が行われた。もしこの結果が別の方向に転んでいたら、今日、私自身だけでなく、同僚、そして会社の状況もまったく変わっていたことだろう。

ルーベン E. スローン
Reuben E. Slone
ミシガン州ベントンハーバーにあるワールプールのグローバル・サプライチェーン担当バイス・プレジデント。

 いましがたポール・ディットマンと私が正式に提案した投資計画について、当時のエグゼクティブ・バイス・プレジデントのマイケル・トッドマン(現ヨーロッパ地区担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント)から「出席者の意見を1人ひとり順番に聞きたい」という意見が出された。これは予想外の展開だった。その時の私はどんな表情をしていたことだろう。

 もちろんポールと私は、事前に1人ひとり、その思うところを尋ね、支援を要請した。このような根回しに何十時間も費やしていたとはいえ、それでも不安な面持ちに変わったことは間違いない。

 関係者全員の支持はもれなく取りつけていた。我々の提案は、ワールプール史上最大規模のサプライチェーン投資を求めるものだった。全社的にコスト節減が叫ばれている折、我々は何千万ドルもの投資を要求したのである。その1部は、要員の新規採用に充てるものだったが、社内では人員削減も進んでいた。そのうえ、ポールと私はサプライチェーン部門の人間だった。