50%未満と国際的に極めて低い日本の年次有給休暇(年休)取得率。日本の社会には、世界が羨ましがる良いことが多くあります。ただ、この「会社がお金を払ってくれるのに休まない」という点は、一種の国民的な悪習であり、長年変わらない「岩盤自主規制」です。これに風穴を開けるためにすべきことの1つ、それは、「皆が、長く、安く、気軽に、バカンスを楽しめる社会にする」ことです。(Nagata Global Partners代表パートナー、パリ第9大学非常勤講師 永田公彦)

日本の調査では見えない、日本人が年休を取れない根本的な原因

日本は有休取得の義務化より「バカンス大国」を目指せ

 日本の労働者(給与所得者)の休日数は、国際的にも決して少なくありません(仮に、土日104+祝日13+年休20+年末年始4=141日とした場合)。しかし、国民的な休日(土日・祝日・ゴールデンウィーク・年末年始等)は、正々堂々と休む一方で、各人が自主的に取る性質をもつ年休については、その権利を自ら放棄し半分しか取っていません。なぜでしょうか?

 その根本的な原因として、前々回のコラムで、年休をほぼ100%取る欧州との比較の中で見えてくる、2つのことを示しました。1つは、社員が、自分の雇用契約(義務や権利など自分と会社の法的な関係)についての意識が低い傾向にあることです。2つ目は、会社が、権利を主張しない社員の残業と休日返上労働を前提に、経営を行う傾向にあることです。

 これら2つのこと、中でも、1の雇用契約に対する意識が高まれば、年休取得率100%達成は可能です。なぜなら単純に、年休を付与することは会社の義務であり、それを取ることは社員の権利なので、社員は、それを行使すればいいだけの話だからです。しかも、皆が休めば、会社も変わらざるを得ないため、2の社員の残業及び休日返上に依存した経営もなくなります。

年休取得率100%のための主要要素

日本は有休取得の義務化より「バカンス大国」を目指せ