超円高の陰で急展開した<br />あおぞら銀買収話の裏事情部長級も肩たたきの対象に挙がっているというあおぞら銀行
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 あおぞら銀行の買収話が浮上している。買収元として名前が挙がるのはオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)。もし実現すれば、外銀が邦銀を買収して日本に上陸する初案件となる。

 そもそも、あおぞら銀は米投資ファンドのサーベラスが筆頭株主。ファンドとしてサーベラスが出口戦略を考えるのは当然で、じつは半年ほど前にもANZに同行株の売却話を持ちかけている。

 そんな折に“超円高時代”が到来。「サーベラスにとってみれば、より高く売ることができる絶好の機会」(銀行関係者)といえる。

 実際、あおぞら銀は認めないが同行ではこの夏から「“肩たたき”通告が始まっており、それに伴い、本店の再移転話も聞こえてくる」(同行関係者)。経費削減による利益の底上げで少しでも高く売ろうとしている、というのだ。

 この件に金融庁は、買収話が出た直後にあおぞら銀幹部を呼び出すなど、関心を示す。「ファンドだと短期利益を重視しがちで困るが、銀行なら外資系でも問題ない」(金融庁関係者)と考えており、“外資”という壁は越えられそうだ。

 ANZ側の思惑としては、豊富な預貯金に注目している、アジア事業拡大のため、などの憶測が飛ぶ。しかし、「これまで外銀が日本に来てもうまくいったためしがない」(金融筋)。

 あおぞら銀といえば、新生銀行との統合に失敗、強みとされた地方銀行とのネットワークも今はずたずたで、「邦銀で関心を示すところはない」(邦銀幹部)といわれるほど。それだけに、買収が実現したとしても、よほど練った戦略がなければANZは買収を後悔することになるかもしれない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

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