「コンビニにない品揃えで勝ち残っていく」(桑原道夫・ダイエー社長)

 ダイエーは9月1日、関東および近畿地区で、久しぶりに直営店の新規出店を行った。

 新店舗は東京・下北沢の「フーディアム下北沢」と大阪・堂島の「フーディアム堂島」の2店舗。それぞれの地区で3年半、3年3ヵ月ぶりの出店となる。

 今後、東京23区内と大阪市内の都心部駅前、2人以下世帯数が75%以上の立地に出店する方針で、既存店の業態変更などを含めて、来年度までに10店舗へ増やす計画だ。

「フーディアム」がターゲットとするのは、コンビニ市場である。

 人口の都市集中化や高齢化が加速するなか、コンビニ主要各社の業績は好調だ。昨秋のタバコ価格の値上げ効果もあり、今年8月まで全店、既存店ともに10ヵ月連続のプラス成長。8月も前年同月比で9.1%(全店ベース)、7.9%(既存店ベース)の増加となった。

 フーディアムもコンビニと同様、24時間営業。だが何よりも最大の売りは惣菜を充実したことにある。店舗規模は200~300坪と、従来の食品スーパー並みだが、惣菜は2倍の300品目とし、単身者や少人数世帯向けに少量パックも増やした。また、店内調理が6割と高く、価格もスーパーと同様の安値であることでもコンビニに勝る。

 ダイエーは2009年度に連結上場以来初の営業赤字に転落したが、10年度に営業黒字化を達成。さらに同年9月に有利子負債の借り換えなどを行ったことで、ようやく投資可能な経営環境が整った。今回の新規出店は、まさしく再建に向けた攻めの一歩といえる。

 とはいえ、フーディアムが激しい競争を強いられるのは避けられない。

 すでにライフコーポレーションなども都心部への出店に注力し始めている。また、都市型の小型食品スーパーも急増している。東京23区内だけでも、イオンが展開する「まいばすけっと」は約100店、マルエツプチも約50店に達する。さらに昨秋にはイトーヨーカ堂も1号店を出店した。

 かたや、コンビニ各社も、食品スーパーの主戦場であった惣菜や生鮮を強化することで、スーパーの顧客を奪いつつある。

「フーディアムには弁当、生活用品に加え、宅配サービス、銀行ATMなど、コンビニにあるものは全てある」(ダイエー)という。

 だが、「何でもあるが、何にもない」といわれるのがGMS(総合スーパー)だ。そのGMS的なカルチャーから抜け出し、いかに魅力的な商品を提供できるか。それこそがフーディアムが成功するか否かの鍵となる。

 いずれにせよ、都市部において、コンビニ、スーパー各社による業態の垣根を越えた競争が熾烈になるのは間違いなさそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

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