車体の刷新、ホームドアの設置など、わかりやすい進化を続ける鉄道。一方、都営バスの変化に気づく人は少ない。東京都交通局が発表した2016年度の経営レポートによると、都営バスの利用者数は年々増加傾向にあり、営業収益もアップしている。にもかかわらず、長い間代わり映えしないように見えるのはなぜなのか?詳しい事情を日本バス友の会の広報、高田氏(仮名)に聞いた。(清談社/中村未来)

最新車両は1台1億円!
実は進化著しい都営バス

都営バス、地味だけど着実に進化している交通機関の未来鉄道の進化に比べれば地味で、変わり映えしない印象がある都営バス。しかし細かく見て行けば、バスだって、なかなかの進化をしているのだ

 日本バス友の会とは、バス愛好者たちの集う団体。そこで広報を務める高田氏(仮名)によると、都営バスは年々進化し続けているが、鉄道などに比べると圧倒的に気づかれにくいだけだという。

 では、都営バスはどんな部分で進化しているのだろうか?
 
「特に力を入れているのが、バリアフリー化です。昔は、バスの乗車口には段差があるのが普通でした。しかし、お年寄りや体の不自由な方が乗りやすくなるように、現在は段差のないノンステップバスが主流になっています。民間のバスも当たり前のようにノンステップになっていますが、いち早く取り入れたのは、都営バスです。公営の乗り物ということもあり、バリアフリー化に対する取り組みには力を入れています」(高田氏、以下同)

 運転席の上部にある行き先表示器も近年、フルカラー化が進んでいる。表示器自体も大型になり、より見やすくなった。また、安全性の向上も進められている。中でも、バスの座席の向きが変わったことは大きな変化だった。

「かつてバスの座席は、窓を背にした横並びが一般的でした。内側のスペースが空くので、その分、定員数も多くなります。しかし、横並びの席だと足の踏ん張りが効かず、急ブレーキの際に事故が起きるということで、現在の正面向きの座席に変わったのです」

 同じ理由で、最後列の中央の席もなくなりつつある。真正面に何もないため、万が一のときに車内に放り出される危険性があるからだ。

 バリアフリーや安全性の強化に加えて、環境に配慮した車両のエコ化も、都営バスの強みだ。

「水素で動く燃料電池のバスが試験的に導入されるなど、よりクリーンな燃料を使う試みが積極的になされています。一般的なバス車両は約1500~2000万円ですが、燃料電池バスはおそらく1億円以上。見た目にはわかりませんが、実は最先端の乗り物なんです」