工場が郊外に移転し、金融やサービスの都市となった深セン中心部。ビジネススタートアップタウンとして2015年に突然誕生した南山軟件産業基地では、イノベーションや起業といった言葉を冠したカフェが立ち並び、Macbook片手の若者が起業の夢を語っている。(チームラボMake部 高須正和)

曲がり角の中国経済が深センの若者を起業に駆り立てるピカピカのビルが並ぶ南山軟件産業基地

 2015年、深セン中心部の南山区に「南山軟件産業基地」(Nanshan Software Industry Base)がオープンした。

 この産業基地が開かれた2015年、李克強首相から中国全土に「大衆創業、万衆創新」(誰でも起業しよう、皆でイノベーションを起こそう)という号令が出された。中国と言えば一党独裁によるトップダウンと、それがもたらす5ヵ年計画などの計画経済というイメージがあるが、実際は1980年の改革開放以降、深センエリアを中心に経済は自由化の一途をたどっている。このスローガンも自由な発想とボトムアップを推奨するものだ。

起業家がネットワークを広げる
起業促進施設としてのカフェ

曲がり角の中国経済が深センの若者を起業に駆り立てる2015年6月のオープニング時にはDIYの祭典「メイカーフェア」がこの産業基地で開かれた

 産業基地エリアには20弱のインキュベータやアクセラレータと呼ばれる起業促進施設が集まっている。それらの促進施設はテンセントや京東(JD.com)などの大企業が出資していることが多い。

 促進施設は起業家のタマゴや若手起業家を、以下のような段階に分けて支援する。

・起業家のアイデアを選考し、出資してスタートアップ(起業)させる
・スタートアップを集めて情報交換させ、人材紹介やプロモーションなどの支援をする
・実際にビジネスをはじめたスタートアップを集めて別の投資家に紹介し、さらに出資を募る

 つまり、アイデアやプロトタイプは起業家自身が考え、支援施設は出会う場や彼らがアピールする舞台を用意し、資金を出すなどの支援を行う。シリコンバレーでよく行われている形式だ。