研究者、外資系コンサル、伝統的日本企業、世界的NPO代表と多様な職を渡り歩いた著者が、自由な働き方を実現するためのスキルを公開した『人生100年時代の新しい働き方』がついに発売! 今回は、同書より、ライフシフト時代を生き抜く世界の一流ビジネスパーソンが、なぜ人を「見た目」で判断するのか、そしてその効果とは何なのか、ご紹介しましょう。

「人を見た目で判断」してもいいのです

「(人を)見た目で判断してはいけない」

 日本ではよくそんなふうに言われる。このこともあって、見た目を判断材料にすることは、あまり勧められないことのように考えてはいないだろうか。

 しかし、私自身は取引先の企業や人物の「見た目」は、ビジネスで何らかの決定を下すにあたって重要な判断材料の1つだと考えている。

 なぜなら、多様性に富み、幅広いネットワークを駆使して仕事をすることが多いライフシフターにとっては、関わる企業や人物のすべてについて、緻密な情報収集をし、丁寧に分析し、自信を持って判断する、なんてことは到底不可能だからだ。

 そこで私が勧めたいのが、「ありのまま観察」だ。「見る」というよりは「眺める」。理屈だけではなく、直感的な判断も取り入れる。簡単に言ってしまえば、「見た目」で判断する、ということになる。そして、「見た目」で判断した情報をもとに、チャンスをものにしていくのだ。

 では、「見た目」で意味のある判断ができるようになるには、「何を」ありのままに眺めればいいのだろうか。

 その対象は、2つある。人と、働く場としての企業の「見た目」だ。

 そして注目すべきポイントは、ピーク・パフォーマーである。

なぜ「ピーク・パフォーマー」を見つけるべきなのか

「ピーク・パフォーマー」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

 コンディションが最高で、非常に高いクオリティでパフォーマンスできている人のことだ。ある調査によれば、役員クラスのビジネスパーソンでは、平常時とピーク・パフォーマンス時を比較すると、生産性に5倍以上の差があるという結果も出ている(‶Increasing the `meaning quotient' of work", Mckinsey Quarterly, January 2013)。

 スポーツの世界においても、ピーク・パフォーマーの存在は大きい。

 2016年のプロ野球セ・パ交流戦で広島東洋カープの鈴木誠也選手が見せた驚異的な、まさに「神ってる」活躍は、アスリートのピーク・パフォーマンスのよい例であろう。

 ビジネスの世界でも、ピーク・パフォーマーがチームの中に1人いると議論は活性化し、クリエイティブなアイデアが出やすくなり、プロジェクトはテンポよく進みはじめる。あるワークショップを主宰したときのことだ。

 それは、「さまざまなステークホルダーの思惑が交錯するコミュニティの中で、社会問題の解決のための事業アイデアを考え、どうやって協力体制を築くか」という、ロールプレイを主体としたワークショップだった。こうしたロールプレイは下手をすると利害関係の対立するステークホルダー同士が攻撃しあうだけに終わってしまうこともあり、スムーズに議論を進行させるのが難しい。

 しかしこのときは、グループの中にピーク・パフォーマーが1人いた。彼の目は常時クルクルと楽しそうに動き、チームメンバーの話を面白そうに身を乗り出して聞いている。私は、きっと彼が突破口になるだろうと踏んで、彼を議論の中心にしながらほかのメンバーをそこに「乗せて」いった。すると案の定、ほかのメンバーも彼のアイデアに刺激され、また、彼のオープンな姿勢に触発されてどんどんクリエイティブなアイデアを発しはじめた。そして活発に意見をやり取りすることで議論は楽しくなり、積極的に協力しあおうという雰囲気も出てきたのだ。

 我々人間も生き物である以上、どうしても好不調の波はある。いくら能力やスキルのレベルが高いビジネスパーソンであっても、高いパフォーマンスやアウトプットを出せないときもある。

 しかし、ピーク・パフォーマーと一緒に仕事をすることにより、好調の波に乗り、最高の状態に至ることができれば、自らもまたピーク・パフォーマーとして予想もしなかったような素晴らしい結果や、創造的なアイデアを生み出すことができるだろう。

(続く)