世界的な景気後退懸念や欧州債務不安などから、投資環境の不透明感が強まっている。株式相場が調整するなか、東証1部でPBR(株価純資産倍率)が1倍割れの銘柄が9月末で全体の67%となった。PBRは、株価を1株当たりの純資産で割って求める指標。PBRの1倍割れは、企業の解散価値を下回るまで、株価が売り込まれていることから株価が割安であることを示唆するものである。

 今回は、投資尺度としてのPBRが、株式市場で注目されるのはどのようなときかを分析する。加えて足元では、単純にPBRを投資尺度にするのではなく、修正を加えた「アンレバードPBR」が効果的であることを指摘したい。

 PBRが有効な局面は二つある。一つ目は「景気底入れ」や「金融緩和策実施」など株式市場が大きな好材料で急騰する場面である。たとえば、2009年3月12日以降、TOPIX(東証株価指数)はリーマンショック後の景気回復を期待して反発に転じた。直前の2月末と3ヵ月後の5月末を比べると、PBR1倍割れ銘柄の割合は78%から62%に減少した。

 二つ目の場面は、景気底入れと反対の景気後退初期だ。景気後退が懸念され始める場面では、景気鈍化がどの程度かを予測するのは難しい。そのため、景気と連動する企業の利益予想も難しくなる。このため利益をベースに評価するPER(株価収益率。株価÷1株当たりの利益)は、信頼性が低下し、相対的に資産価値で評価するPBRの有効性が高まる。