ネットに関する問題に詳しい森井昌克・神戸大学教授は「なんらかの規制は必要」としつつも、「成人して初めて手にするのではもっと問題が起こる。ある程度、若いうちにトラブルや危険に接しながら成長していく必要がある」と、実体験での成長を重視している。

ネット教育は性教育と同じ。
子供を情報から隔離できない

 ネット上の現象に関する批評を専門とするブロガーの荻上チキ氏は「ネットに関する教育は性教育に似ている」と指摘する。子どもたちを性的な情報から完全に隔離することは不可能である以上、教え方は難しいが避けて通れない。同様にネット教育も、その手法を、おとなが知恵を絞って編み出さなければならない。

 もちろん、現状でも教育の現場で、ネットや携帯電話を利用する際の注意点などを啓蒙する動きはある。携帯電話会社や端末メーカーなどの企業や、こうした問題に取り組むNPO法人などが、学校に出向いて講義をしているのだ。

 多くは「自分がやられていやなことは、人にはやらない」「判断力、自制力、責任力を身につけよう」といった、いわば道徳の授業に近い教え方になっているが、学校の教師が日常的に指導するケースは少ないだけに、効果は限定的だろう。家庭においてもしかりである。そもそも教師や親がメールやネットの特性を理解していない。

 今必要なのは、自分たちが経験しなかったことが今の子どもたちのあいだに起きているという認識だ。人類の子育ての歴史のなかで、子どものほうが情報発信力、受信力を高めてしまったというのは、初めてかもしれない。

 なにしろ親の世代の幼少時代には携帯電話などなかった。そのため、子どもたちがどういう感覚で、どのように携帯電話を使っているのか、本音ではわからない。