古から今も変わらず慣習、習慣を受け継ぎながら、流々とした時を刻む町京都祇園。時代を超えて私たち日本人の心を惹きつける「粋の文化」を祇園に入り浸る著者が「かっこいいおとな」になるために紡ぐエッセイ。第13回は、祇園に伝わる暮れの挨拶についてお届けいたします。

祇園は、挨拶に始まり挨拶に終わる撮影/福森クニヒロ

文化を引き継ぐ秘訣は?

 年の暮れの花街も何かと慌ただしく時が過ぎていきます。お座敷では忘年会やら年の瀬の宴席やらと本業も忙しいのですが、挨拶事の段取りにも手を取られます。

 12月13日は「事始め」と言って、舞のお家元をはじめ習い事の師匠のところに芸舞妓衆がご挨拶に回ります。お正月の準備を始めるので事始めと言われるようですが、小さなお鏡餅を持って挨拶に回り、舞のお家元からは舞の扇子をいただきます。

 言わばお歳暮を持って届けるイメージでしょうか。お世話になっているお茶屋さんや育ててくれた母屋などにお餅を届けるのですが、この時の挨拶口上が正月前であるのに「おめでとうさんどす」と述べるのが花街ならではのようです。一般の商家でも普通にあった習わしのようですが、花街では何百年と続いているようです。