東日本大震災後、太陽光発電のすそ野が広がっている。これまではCO2削減など、エコロジーに関心のあるユーザーが大半だったが、地震による停電や、その後に東京電力が行った計画停電を経験し、「自助努力で電源を確保したいという人が増えている」(住宅メーカー)からだ。

 太陽光発電協会によると、2011年度上半期(4~9月)の住宅用太陽電池出荷量は約54万3000キロワット。前年同期比で4割近い増加を記録した。

 しかし、このまま伸び続けるか否かについて、業界関係者は一様に「補助金次第」と控えめだ。

 というのも、太陽光発電は決して安い買い物ではないからだ。1キロワットあたり55~60万円ほどが相場。住宅の大きさにもよるが、3キロワット分設置すれば165~180万円、5キロワットなら275~300万円程度かかる。

 余った電力を国に販売する仕組みもあるが、元を取るには10年以上はかかる計算だ。

 頼みの綱は補助金だ。国は1キロワットあたり4万8000円の補助金を出しているほか、大震災後、県や市町村レベルでも補助金が充実している。国と県、市すべてから補助金を受け取ることも可能で、総額50万円を超える金額をセーブできるケースもある。

 しかし、いつまでも財源が続くとは限らない。

 現に国の補助金も、今年度分の予算は10月までで使い切った。11月以降は第三次補正予算に盛り込まれるが、来年度以降どうなるかはまだ分からない。県や市町村のなかには期間限定にしたり、応募者多数の場合は抽選方式にしたりしている自治体もある。

 また、実用レベルに達していないという現実もある。

 太陽電池を設置しても、蓄電池がなければ、夜間は電源とならない。現在、販売されている家庭用の蓄電池は、数百万円もするが、「このサイズでは、生活を1日維持できるかどうか」(住宅メーカー)。これでは災害時の電源として頼りになるとは言いにくく、性能を進歩させ、価格を下げる必要がある。

 意識の高まりは歓迎すべきこと。ただ、少しでも早く使い勝手の良いものにしなければ、せっかくのブームも一過性のものになりかねない。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)

週刊ダイヤモンド