金融不安が高まった9月以降、アメリカの著名投資家ウォーレン・バフェット氏の名前をニュースで見かけることが多い。

 最初に大きく報道されたのは、米証券最大手ゴールドマン・サックス(GS)への出資だった。9月23日付けのGSの発表によると、バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは、配当利回り10%の優先株を50億ドル購入したほか、今後5年以内にゴールドマンの普通株を1株115ドルで購入できるワラント50億ドルを取得したという(GS株は10月6日のニューヨーク市場終値で124ドル)。株価が上がらない間は、おいしいクーポンでしのげる上、オプションの行使期限までの時間が長いので、大きなオプションバリューがある。バフェット氏は相当に大きな実質ディスカウントでGS株を買った。

 続いて、10月1日には、ゼネラル・エレクトリック(GE)への出資も決めた。30億ドルの優先株に加えて、ここでも今後5年間で30億ドル分の普通株を購入できる権利も取得した。優先株のクーポンは10%、付与されたオプションバリューも大きい。

 思うに、金融不安の渦中にあるGSはさておき、GEがこういう形の資本調達に追い込まれたのは、アメリカ経済が相当病んでいるからだろう。GEの株価はこのところ下がっていて、昨年の半値くらいの水準で推移している(10月6日ニューヨーク市場終値は21.38ドル)。
 
 GE側は、「資本調達できたことで戦略の柔軟性が確保できた」と言っているが、これだけの高いコストの資本を受け入れるというのは、端的に言って、資金繰りに困っているからだろう。バフェット氏はGEへの投資決定に際して声明を出し、「GEは米産業のシンボルだ」と述べているが、その優良企業が金繰りに困っているということは、米国経済が深刻な事態に陥っているということだろう。

 背景を考えると、GE自体は金融関連業務が大きいことで(利益の3割以上)、信用を安く見られている面はある。10月3日のウォールストリートジャーナル(WSJ)によれば、バークシャーによる出資発表の前後には、クレジットデフォルトスワップ(CDS)市場におけるGEのプレミアムが、550~650ベーシスポイントに達していたという。金繰りはかなり厳しい状態になっていたようだ。