国際商品相場の中心である原油が高値圏でもみ合っている。足元では、11月14日にIEA(国際エネルギー機関)が発表した月報で世界の石油需要見通しが下方修正されたことや、15日にEIA(米エネルギー情報局)が発表した週次石油統計で原油やガソリンの在庫が増加していたことがマイナスの材料視され、上値が重くなっていた。

 しかし、17日には、トランスカナダ社が運営するキーストーン・パイプライン(輸送能力:日量59万バレル)が、米サウスダコタ州で原油流出事故を起こしたことを受けて、基調が変わった。

 11月上旬に、国際指標である欧州北海産のブレント原油で1バレル当たり65ドル弱、米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で58ドル弱と、2015年夏場以来の高値を付けた。

 高値の背景には、第一に、11月30日に開催されるOPEC(石油輸出国機構)総会を控えて、現行18年3月末を期限とする産油国による協調減産が同年12月末まで9カ月延長されるとの見方が有力になっていることがある。

 第二に、米石油掘削リグの稼働件数が8月11日に終わる週をピークに減少に転じており、米国のシェールオイルの開発活動がやや停滞する兆しと受け止められている。

 第三に、石油需要は中国・インドといった新興国に加えて米欧でも堅調であり、需給引き締まり観測につながりやすくなっている。

 原油先物市場の価格体系も需給引き締まりを反映したものになってきている。WTIの先物カーブを見ると、9月ごろまでは、期近よりも期先の価格が高いコンタンゴと呼ばれる形状であったが、11月には期近よりも期先の価格が低いバックワーデーションの形状にシフトしている。

 コンタンゴは、現物や期近に引き渡しされる原油の需給が緩和していることを示すのに対し、バックワーデーションは現物や期近物の需給が引き締まっていることを表す。上図(11月16日時点)では、5カ月物が最も高く、それよりも期先になるほど、価格が低下している。

 最近のバックワーデーションは、原油需要の好調さや、産油国による協調減産によって、当面の原油需給が引き締まっているとの市場参加者の見方を反映している。

 週次で発表され、原油需給の動向を探る手掛かりとして注目度が高い米国の原油在庫は、秋の不需要期にもかかわらず、さほど増加していない。原油需給が引き締まる方向に向かっていることと整合的な状況と思われる。

 OPEC総会で減産延長が決定されると、材料出尽くし感から原油相場はいったん売られるかもしれないが、下値は限定的だろう。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)