オリンパスのマイケル・ウッドフォード元社長が取締役を辞任した。理由はかねて訴えてきた、高山修一社長をはじめとする現経営陣の早期刷新が、現状では難しいと判断したためだ。

 しかし、「オリンパスを去るつもりはない」と、親しい関係者に力強く宣言。取締役辞任はギブアップではなく、次のステージにおける闘いの幕開けを意味する。1週間ほどのつばぜり合いを経て、高山社長との全面対決はついに山場を迎えた。

 ウッドフォード元社長は11月23日、取締役会参加のためにロンドンから成田空港に降り立った。その翌日、高山社長は社員に向けて、現経営陣の現状認識や今後の対応をまとめた「社長声明」を送っている。

 そのなかで高山社長は、現経営陣の総退陣を求める声があることに触れ、「今、経営陣の交代をして、山積する諸課題に迅速な対応ができないようでは、目前に迫っている危機を乗り越えられません」と反論。「改革案と新たな経営体制については、次の株主総会でその信を問います」と、現経営陣による続投の決意を宣言した。

 翌日に取締役会を控え、ウッドフォード元社長に対する牽制とも取れる内容を、社内に発信していたのだ。

 そんななか開催された取締役会は、ウッドフォード元社長を含め全取締役が、上場維持が重要だという認識で一致。表面上は静かに幕を閉じた。

 しかし、しこりは残った。取締役会当日の夜、宮田耕治元専務がウッドフォード元社長と、一連の問題が起きてから初めて顔を合わせた席でのことだ。

 オリンパス再生のために彼の社長復職を目指す、社員向けサイト、「Olympus Grassroots」で、草の根運動を繰り広げている宮田元専務は、高山社長の放った“反論”への疑問をぶつけた。

 「現経営陣が“業務執行役”としての立場を続ければ、会社は回るはず。やはり“取締役”は辞任すべきではないか」と問いかけたところ、ウッドフォード元社長は「まったくそのとおりだ」と答えたという。

 そして11月29日に高山社長が対外的にも続投を表明したことが決定打となり、12月1日、ウッドフォード元社長は取締役を辞任するに至る。加えて、同日発表した声明で臨時株主総会の招集を正式に要求。ただちに取締役としての正当性を株主に問うよう訴えた。

 その後開いた会見ではさらに、賛同する株主を集める「委任状争奪戦」を仕掛ける心づもりも表明。徹底抗戦の構えだ。

 経営の舵を握るべきは誰か。収まることのない御家騒動に社内外からの視線は、さらに厳しさを増した。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

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