クラウドや測位技術、AIやドローンなどの新技術の出現によって「位置情報ビジネス」が飛躍的に進化を遂げている。新産業・新サービスの創出により市場は最大約62兆円(※)まで拡大するとの見方もあり、さまざまな分野での可能性が期待されている。

※…総務省「G空間×ICT推進会議」報告書

地理空間情報を円滑に流通させ
社会的な価値を生み出す

 今、新たなビジネスを生み出すものとして、G空間情報が注目されている。G空間情報とは地理空間情報のことで、総務省の定義によれば「空間上の特定の地点又は区域の位置を示す情報」、または位置情報および「位置情報に関連付けられた情報」とされている。簡単に言えば、位置情報とそれにひも付けられたデータから成る情報である。

東京大学生産技術研究所人間・社会系部門関本義秀准教授東京大学生産技術研究所 人間・社会系部門
関本義秀准教授

1973年神奈川県生まれ。97年東京大学工学部土木学科卒業、2002年東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻・博士課程修了。13年より現職。「G空間情報センター」の運用を行う「社会基盤情報流通推進協議会」の代表理事も務める。

 G空間情報の最も分かりやすい活用例は、安心で安全な生活を守るサービスである。例えば、震災などで被災した地域の速やかな復旧のために、G空間情報を利用して計画図作成や避難経路の選定を行う。あるいはSNSを活用し、被災者からの投稿で浸水や土砂災害の発生地域を推定し、災害対応関係者の間で情報の共有を可能にする等々。

 もちろんハザードマップの作成だけでなく、G空間情報を活用すれば、既存のサービスを高度化・発展させたり、新たな産業やサービスを創出することができる。さらにAIを活用すれば、例えば物件価格と災害情報をリンクさせた不動産情報など、これまで想像もできなかったようなサービスや製品が登場するだろう。

 2016年11月、このG空間情報を活用する日本初のプラットフォームとして「G空間情報センター」が設立された。同センターは、産官学のさまざまな機関が保有する地理空間情報を円滑に流通させ、社会的な価値を生み出すことを支援する機関である。12年3月に閣議決定された「地理空間情報活用推進基本計画」に基づいて設立されたもので、社会基盤情報流通推進協議会が運用を行っている。

 同協議会の代表理事で、G空間情報の研究を行っている東京大学生産技術研究所の関本義秀准教授は、G空間情報センターを「産官学が参加した、世界にも類がないオールジャパンの地理空間情報のプラットフォーム」であると言う。

「同センターでは、国や自治体などから提供される無料データや、民間企業から提供される有料データを、自由に組み合わせてワンストップで入手できるプラットフォームを構築しています。地理空間情報は、料理と同じようにさまざまな素材を組み合わせることで、今まで見えなかったもの、価値の高いものを生み出せる可能性があります。アクセス数は次第に増えており、G空間情報の本格的な活用の第一歩がまさに始まったところ。今後の活発な活用が見込まれます」と、関本准教授は早くも手応えを感じている。

 期待されるのは“G空間×ICT”の適切な利活用だ。その実現は、日本の経済や社会に大きな影響を及ぼし、多様な課題を解決する有効な手段になると期待されている。