日本の中小企業は稼ぐ力が弱い?ブランディングは大企業しかできない?広告宣伝にお金をかけずに、今いる人材でできるブランド戦略を紹介した『小さな会社のはじめてのブランドの教科書』からそのエッセンスを紹介します。

お金のかからないブランディングは可能か

 拙著『小さな会社のはじめてのブランドの教科書』は中小企業こそブランディングに適していて、それは決してお金がかかるものではありません、と言う趣旨で書かれています。
 本当に?という疑問にお答えする前に、そもそも“ブランド”って何?という点から説明したいと思います。
 ブランドとは、他者には無い、独特の価値ある特徴です。
 でも“ブランド”とは概念なので、残念ながら目には見えません。見えるのはブランドのロゴや商標だけです。
 その概念を、人の脳にイメージさせる行為が“ブランディング”なのです。たとえば、あのブランドは、高品質だ。高機能だ。耐久性がある。信頼できる。親切なサービスだ。ファッショナブルだ。などのイメージです。
 ですから、ブランディングを行うときは、できるだけ特徴やキャラクターを強く浮かび上がらせ、それを他者の心に刺さるよう働きかけることが必要です。
 この“ブランディング”、なぜか大企業の専売特許のように見られている節がありますが、実は中小企業、あるいは小企業の方がずっと早く簡単に実現することができます。
 ブランディングさえできれば、価値が高まり、他者との差別化ができますから、値引きをせずに製品やサービスを売ることができるようになります。
 そうすれば粗利益が上がります。そして、一般管理販売費(人件費、家賃、物流費、広告宣伝費など)が低い中小企業だと、直ぐに営業利益がアップします。
 そうなれば、大切な従業員に給料や賞与という形で還元することができ、好循環につながります。

お金を掛けないブランディングのすすめ

 さて、ここで私が考えるブランディングについて、少し異なった視点から見てみることにしましょう。それは、会社を家にたとえてみることです。
 製造業、サービス業問わずに重要なのは、人と運転資金。これこそが基礎、つまり土台となります。
 次に家ですから最低4本の柱を立てなければなりません。
 その4本とは、「顧客」「販売しようとするサービスや製品」「商売のノウハウ」「情報」の4本です。
 顧客が何処にいるのか?顧客はどんな人や会社なのか?について知らないでビジネスを始めることはできませんよね。
 次は販売しようとする製品やサービスです。製造業で言えば、製品そのものが重要なことは言うまでもありませんが、素材や原料の「仕入れ」に力を入れることが成功への最短距離です。
 一方、サービス業で言えば、「川下」、つまり顧客と直に接している「現場」こそが最重要となります。
 次に「商売のノウハウ」とは営業や販売ですね。
 要するにそれぞれの顧客とどのような対話ができれば、顧客はお金を払ってくれるのだろうか?と、言うノウハウのことです。
 さて中小企業では、広告宣伝や販売促進にお金を投じてしまっては、営業利益は残りません。そこで、ブランディングの出番となります。
 私が本書で初めから、終わりまで強調しているのは、「お金を掛けないブランディングのすすめ」です。
 それには、社長を始めとして、非営業の社員も含め、全社一丸となってブランディングを実施する、「インナーブランディング」が強力な武器になります。
 また、「あれもこれも」ではなく「何々といえば、XXX」のように、自社の強みに集中することこそ、中小企業のブランディングの極意です。

 拙著では日本の企業を始めとして、中小企業で経済が成り立っているイタリアやフランスの小さな会社やホテル・レストランなどの成功事例も多数紹介しているので、具体的な事例はそちらを参照頂けますと嬉しいです。