「ビジネスウイーク」誌2008年2月11日号によれば、FRBは2007年、市場のファンドマネジャーと頻繁に会って、マネーマーケット・ファンドなどに問題が生じていないかヒアリングを行なっていたという。

 11月13日にはバーナンキ議長は13人の機関投資家(債券担当チーフ)と会合を行なっている。市場の動向がつかめていないという焦りを反映したものだろう。

 大手投資信託の担当者は「まるで“ロックスター”との面談のようだった」と興奮気味に語っている。市場の現場にいる人間にしてみれば、FRB議長と直接議論できれば感激してしまうだろう。バーナンキにとっては純粋に市場の混乱状況を把握するためのミーティングだったとは思うが、結果的にバーナンキファンを増やすことにつながったようだ。議員と異なってFRB議長は選挙運動のようなことをする必要は本来ないが、シンパをつくっておくことは大事と思われる。

 また、情報公開法に基づいて「ウォールストリート・ジャーナル」紙が、バーナンキの面会相手を調べたところ、彼は1月2日にグリーンスパン前議長とランチミーティングを行なっていたことがわかった。1月10日の講演でバーナンキは大胆な緩和策を行なう用意があるとメッセージを市場に発したが、その8日前にグリーンスパンに相談していたわけだ。

 トリシェECB総裁やキング・イングランド銀行総裁とも情報交換を行なっている。トリシェとは電話で12月5日に話している。その翌日に開催されたFOMCの電話会議で、FRBは新しい資金供給手段であるTAFの大枠とECBとの為替スワップ(ECBが欧州市場でドル資金供給オペを行なうためのもの)を決定していた。5日のバーナンキとトリシェの電話会談は、そのための打ち合わせだったのだろう。

 その他のバーナンキの最近の面会相手としては、ファニーメイ、フレディマック、UBS、ゴールドマン・サックス、シスコ・システムズ、インターナショナル・ビジネス・マシン、フォード・モーター、JPモルガン・チェース、ワコビアなどの幹部が挙げられる。

 バーナンキはブッシュ大統領と11月29日にランチで面談している。また、ポールソン財務長官とは頻繁に朝食を共にしている。国会議員とは26回にわたって食事や面会、電話で議論を行なっていた。その多くは民主党だった。

 そこまで詳細に開示される透明性には驚かされるが、あまり詳しく公開されると、詮索をいやがってFRB幹部に会いたがらない人が出てくる恐れもありそうだ。

(東短リサーチ取締役 加藤 出)