海浜幕張副都心の高層ビルに設けられた「トーマツ監査イノベーション&デリバリーセンター(AIDC)」。眼下に幕張メッセや千葉マリンスタジアム、そして東京湾を一望できる絶景が広がる

大手監査法人、トーマツが千葉市の海浜幕張副都心エリアに「トーマツ監査イノベーション&デリバリーセンター(AIDC)」を2017年12月1日に開所した。今後、ここを業務の標準化と集中化の拠点とし、監査品質の向上と監査業務における働き方改革の促進を目指すという。「監査イノベーション」と銘打つ肝いりの取り組みだが、どこがどのように変わるのか

「公認会計士の稼働率高止まり」が
監査品質を下げる可能性も

監査法人トーマツの丸地肖幸経営企画本部長

 トーマツがAIDCを開所した背景には、「公認会計士の稼働率の高止まり」という監査業界が抱える共通の課題がある。事実、日本公認会計士協会の会長も、その声明(2017年3月31日「昨今の働き方改革の議論を踏まえた決算に関する業務の在り方について」)において、「決算開示に向けた監査業務の繁忙期(4~5月)は、従来から企業、監査業界の双方で相当の負荷が生じ、そうした状況が決算やその監査の品質に及ぼす影響も懸念している」と警鐘を鳴らしている。 

 トーマツは、約3600社ある上場企業のうち900社以上の監査を担当している。その約70%が3月決算であることや、公認会計士不足といった社会的背景もあり、同様の課題に直面していた。

「こうした状況は、監査品質やモチベーションの低下、公認会計士を目指す若者の減少をも招きかねません。そのため、当社においても高止まりした稼働率を引き下げ、監査品質と公認会計士の生活の質を向上させることが必要だと考えています。その抜本的な施策の1つがAIDCの立ち上げです」(丸地肖幸・トーマツ経営企画本部長)

 AIDCでは、監査業務の標準化や、公認会計士以外の多様な人材の登用、デジタル技術の活用によって、監査業務における働き方改革を進めるという。