新聞やテレビで見かける経済ニュース、ネットで飛び交う経済政策の議論、経済学の授業で学んだはずのあの理論……。私たちの身のまわりを飛び交う「経済」にまつわるお話に、ふとこんな疑問を感じたことはないでしょうか?
「どうして、経済学や経済のオハナシは難しく見えるの?」
「エコノミストの人が何を言っているのかよくわからないんだけど、自分だけ?」
需要と供給から、金利、インフレ、GDP、為替レート、金融バブル、行動経済学まで、いざその意味を考えると「何だっけ?」となるような言葉ばかり……。そんな疑問を解消すべく刊行された新刊『1分間で経済学』は、いま知っておくべき最重要単語を200網羅し、そのすべてを「見開き1ページ+図解」した、まさに最強の入門書。今回は同書より、今年ノーベル経済学賞を受賞したことで再び注目されている「行動経済学」についての解説をご紹介します。

行動経済学――Behavioural economics

 ともすると経済学者は、消費者や企業は合理的だと考えがちだ。合理的とは、消費者や企業は費用に対する便益を最大化する行動を選択する、ということである。しかし、人々の選択を観察すると、そんな考えは人々の実際の行動からは程遠いのがわかる。行動経済学という新しい流派は、現実の人間のそういう特異な行動を研究している。

 標準経済理論は、たとえば、人々はリスクに対して一貫した態度をとると主張する。往々にして人々はリスク回避的であり、確かで安全な選択と、リスクがあるがもっと儲かる選択では、前者を選ぶ傾向があるという。

「行動経済学」がノーベル経済学賞を獲ったらしいけど、「経済学」とはどう違うの?人間が持つ気まぐれで情緒的な側面を取り込んだ経済学、それが行動経済学だ(Photo: Shutterstock/AMC Photography)

 行動経済学によると、儲かるかもしれないときと損するかもしれないときでは、人は違う行動を示す。儲かるかもしれないときはリスク回避的、損するかもしれないときはリスク愛好的、つまり発生しうる損を避けるためにリスクをとるようなのだ。どうやら人間にとって、ある額を失うことの苦痛は同じ額を得ることの喜びよりも大きいようである。この観察結果は「保有効果」の存在を示唆している。人はショウルームに飾られている車よりすでに自分が持っている車を高く評価するということだ。合理的経済人なら、自分が持っていようがいまいが、車の評価は同じになる。