上海市内にある中国有数のファッション街「南京西路」。プラダやルイ・ヴィトンなどの超高級ブランド専売店が並ぶこの一角に、意外な日本ブランドが出店している。そのブランドとは、良品計画が展開する「無印良品(MUJI)」だ。現在、MUJIは中国本土で上海や北京などを中心に35店舗を展開(2011年12月9日現在)。地域別売上高は昨年の段階で欧州を抜き、香港グループに次ぐなど、いまや同社のなかで最も重要な市場の1つだ。

日本では手軽にシンプルで機能的な商品が購入でき、人気を博している同ブランド。だが、中国での販売価格は日本よりも15~30%ほど割高と、一般的な中国人からすれば高級品と言っても過言ではない。それにもかかわらず、「MUJI」が中国市場で絶大な人気を得ているのは一体なぜだろうか。同社の中国進出を先頭に立ち進めてきた松﨑暁・取締役海外事業部長に、日本とは大きく異なる中国独自のブランド戦略を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

香港を制するものは中国を制す

――まず、中国進出の経緯を教えてください。

値下げなし、日本より割高なのになぜ売れる?<br />中国高級ブランド街で人気を博す「無印良品」の秘密<br />――良品計画・松﨑 暁取締役が語るブランド戦略無印良品・松﨑暁 取締役海外事業部長

 2005年7月1日、上海・南京西路に中国1号店をオープンしたのがはじまりです。ただ当時は、本格的な店舗展開の開始ではなく、「無印良品」「MUJI」の商標を香港の会社に先行登録され、衣服雑貨を売れない状況にあった問題を解決するための、訴訟戦術の1つに過ぎませんでした。

 その後2007年12月に、中国の中級高等裁判所で、「無印良品の商標は良品計画の所有に属する」という終審判決を受け、衣服の商標問題が解決。そこで2008年1月の上海浦東での出店を皮切りに本格的に中国進出・多店舗展開を進め、今は中国に35店舗を出店しています。

――中国進出以前から香港に出店されていますが、とても人気が高いそうですね。香港での成功は、中国進出にどのような影響を与えていますか。

 香港へは1991年に進出し、90年代後半に一旦撤退しましたが、現地の方から熱烈なカムバックコールを受け、西友との合弁として再進出。2001年4月に西友が運営する「西田百貨」に香港1号店をオープンしました。

 当時としては記録的な開店時の売上高を叩き出し、良品計画の海外事業を黒字転換させたほど。インパクトの大きい成功でしたね。中国本土で無印がこれほど受け入れられ、短期間で成長できたのは香港の成功のおかげだと思っています。というのも、香港の方たちが日本のマーケットや流行に敏感なのと同様に、中国本土の方たちの香港への関心は非常に高く、憧れも強いんですよ。