政府の教育無償化政策は「思いつき」に過ぎないといえる理由Photo:首相官邸HP

 安倍首相が掲げた「教育無償化」は、「改憲」や「選挙目当て」が意識された中で、地に足のついた議論はまったくなかった。今年夏に先送りされた制度設計に向けて、議論をどう深める必要があるのかー。世界銀行や国連児童基金に勤務し、いまはNPO法人サルタック理事をしながら米国の大学で教育政策などを研究する畠山勝太氏は、1) 経済成長のためにどのような教育投資が必要か、2)教育投資で政府が果たすべき役割の視点から、戦略的な教育投資の重要性を訴える。

経済成長での教育の役割は
スキルをつけ生産性を上げること

 経済成長において教育が果たす役割は、主に「人的資本論」から説明することができる。

 教育を通じて個々人は知識やスキルを身につけ生産性を向上させる。そして、向上した生産性によって、より高い賃金を得ることが可能となる。そしてこれを足し合わせたものが、経済成長となる。

 つまり、人的資本論に基づけば、いかに生産性向上につながる知識やスキルを教育が提供できるかがカギとなる。