2011年は東日本大震災、円高、ユーロ危機、タイの大洪水と、日本にとっては内外ともに災厄多き年だった。12年はそれ以上に不確実性、不安定性が高まる年となりそうだ、何しろ世界は政治の季節に突入する。1月の台湾総統選に始まり、露、仏、米、韓では大統領選、中国でも政権交代が行われる。北朝鮮情勢も不安材料だ。そうした状況下、12年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々に、アンケートをお願いし、5つののポイントを挙げてもらった。第8回は、経済ジャーナリスト・財部誠一氏。

復興特需で国内景気は好調な一方、<br />産業空洞化がより劇的に進展する<br />――経済ジャーナリスト・財部誠一氏たからべ・せいいち/経済ジャーナリスト。1956年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、野村證券に入社。同社退社後、3年間の出版社勤務を 経てフリーランスジャーナリストに。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして期待される。BS日テレ『財部ビジネス研究所』、テレビ朝日 『報道ステーション』等、TVやラジオでも活躍中。また、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」を主宰し、「財政均衡法」など各種の政策提言を行っている。

①クライマックスを迎える欧州危機

 過剰債務の積み重ねによって実現された好況はいずれ必ず破綻するという点で、欧州危機は過去の財政危機、金融危機となんら変わらない。ギリシャをユーロから脱退させるのか。ドイツが抜けるのか。ユーロ全体を解体して、厳しい財政規律をクリアした国だけで新ユーロ体制に移行するのか。そのプロセスでは銀行の連鎖倒産といった危機的状況が起こる。クライマックスの到来で、人々は必要な公的資金投入へのコンセンサスが得られるからである。

②習近平政権誕生で中国経済活況に

 インフレ抑制のために金融引き締めを続けてきた中国だが、2011年12月に一転して金融緩和に動いた。新政権のスタートダッシュのためのウォーミングアップが始まったと理解すべきだろう。