経営用語に「シナジー効果」や「相乗効果」というのがある。上場企業の有価証券報告書を調べてみたところ、2011年では1461社で採用されていた。つぶてを投げれば大半の企業でコツンと当たる「シナジー効果」といったところだ。今回取り上げるソニーの有価証券報告書にも「他のソニービジネスとのシナジーの強化」という表現で記載されていた。

 ソニーにおいて、シナジーを期待して多角化を図った事業にはどのようなものがあるのだろうか。2011年3月期に係る有価証券報告書で、セグメント別の売上高構成比を調べてみた。その結果が、次の〔図表 1〕左側に示した円になる。セグメント間取引消去前のものとしている。

ソニーがエレクトロニクス企業として<br />復活するために必要なこと

 〔図表 1〕にある「CPS&PDS」は、「コンスーマープロダクツ&サービス」と「プロフェッショナル・デバイス&ソリューション」の略称であり、テレビ・ビデオ・ゲーム・半導体・ネットワーク-ビジネスなど、ソニーの中核をなす事業である。

 昨今のソニーは元気がない、と指摘される。それを証明するのが、次の〔図表 2〕である。〔図表 1〕にある各セグメントの営業利益を、四半期移動平均で描いたものだ。

ソニーがエレクトロニクス企業として<br />復活するために必要なこと

 〔図表 2〕を見ると、2008年9月に起きたリーマンショック以降、赤色の中核事業(CPS&PDS)が、大幅なマイナス領域を彷徨(さまよ)っている。その原因としてしばしば指摘されるのが、ハード面は韓国や台湾のメーカーに圧倒され、ソフト面はアップルやソーシャルゲームに押され気味、というものだ。そして、ソニーには独創性のある製品開発がなくなったとも指摘される。

 果たしてそれらは、ソニーの業績を語る上で正しいのだろうか。

 〔図表 2〕を見ていると、映画事業と音楽事業に期待が持てそうだが、筆者の解析結果は少し異なる。〔図表 1〕右下にある小さな円が、ソニーの将来を占うカギになる。タネあかしは後述するとして、ソニーも知らぬ「ソニーの実像」に迫ってみることにしよう。

孫引きの経営分析が横行する

 この年末年始を利用して、ソニーの有価証券報告書や決算短信を、あれこれひっくり返してみた。「いやぁ、まいった、まいった」というのが正直な感想だ。