中国経済の強みを減殺する
“一人っ子政策”の後遺症

中国経済は人口減少と格差問題でこのままでは「成長の限界」に

 2017年、中国のGDP(国内総生産)は実質ベースで前年から6.9%成長した。成長率の加速は7年ぶりで、この成長率は当初の目標である6.5%を上回った。2018年の成長率も省人化投資などに支えられ、6%台半ばの水準を維持すると期待される。今後も中国経済が急速に減速する場合には、政府がインフラ投資などを積み増す可能性が高い。短期間で経済が大崩れするリスクはそれほど高くはないだろう。

 一方、長期的に見ると、中国経済にはさまざまなリスクが潜んでいる。GDPと同時に発表された統計では、2017年の出生数が1723万人と、前年から60万人程度減少したことが明らかとなった。

 これは、“一人っ子政策”の後遺症と言えるかもしれない。2016年1月に中国政府は一人っ子政策を撤廃したが、36年間続いた人口抑制策の影響を、短期間で払拭することは難しいと見られる。中国では、一人っ子政策の影響もあり、今後、少子高齢化のマイナスの影響が顕在化するはずだ。

 少子高齢化の進展に伴い、経済の働き手である生産年齢人口が減少することは避けられない。これまで中国は、人口増加が安価な労働力の供給を支える“人口ボーナス”を享受してきたのだが、今後はむしろ、少子高齢化がマイナスに作用する“人口オーナス”の時代を迎えることになる。

 それは、これまでの中国経済の強みを減殺する要因だ。成長率を維持していくためには、付加価値の高い産業を育成し、競争力を強化できるか否かの重要性が増す。それは中国政府も充分に認識しており、相応の対策を進めているところだ。

 問題は、少子高齢化の進展に加えて、社会保障制度などを実態に合わせて改革することが必要になることだ。それができないと、共産党政権に対する支持率は低下することが懸念される。いずれ、中国にとって深刻な状況になる可能性が高い。

少子高齢化の進展で
オーナス化する労働人口

 2012年、中国の生産年齢人口(一般的には15歳から64歳の人口を指す、中国では15歳から59歳を生産年齢人口と定義している)は建国以来、初めて前年から減少した。これは、人口の増加に支えられた豊富な労働力をもとにした経済成長の終焉を意味するものだった。