シリコンバレーで戦略コンサルタントの影が薄いのはなぜか筆者と長年のパートナーであるリチャード・メルモン氏(後列、左から2人目)。写真はネットサービス・ベンチャーズが9月26日に開いたFintech VCイベントにて。 Photo by Aiko Suzuki

 私の会社は、シリコンバレーのスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)と関わりながら、企業への新事業創造のコンサルティングをしている。

 私のビジネスパートナーは、シリコンバレーの発展と共に歩んできた人物で、リチャード・メルモンという。コンピューターゲームの草分けの会社、米エレクトロニック・アーツを共同創業した経歴を持つ。彼とは20年ほど前から一緒にコンサルティングを始めたのだが、彼の口癖は「コンサルタントは大嫌い」である。

 こんなことがあった。

「この製品の市場投入のマーケティング戦略を考えてほしい」

 ある中堅企業の創業者社長が新製品を持って相談に来た。私は、ミーティング中に早速コンサルティングプロジェクトの内容について考えを巡らせていた。だが、しばらく製品をだまって見ていたメルモンは、突然沈黙を破った。

「Don't.これは売れない。発売しても無駄だ」

 この社長の顔が真っ赤になり、耳から湯気が噴き出しているのが見えたような気がした。そして席を蹴って出ていった。せっかくのプロジェクトを逃してしまったのだった。

 後日、風のうわさで「その会社は別のコンサルタントを雇いマーケティングキャンペーンを打ったが、製品は全く売れず、大きな打撃を受けた」と聞いた。メルモンは、売り上げ機会を失い落胆した私をよそに、「そうだろう。私の言うことを聞けばよかったのに」と涼しい顔をしていた。

 私にとってこの一件が「本当に価値のあるコンサルティングとは何か」について、考えるきっかけとなった。