チャート図解を用いて森羅万象を構造オチの笑いに落とし込む「分類王」クリエイションを発表してきた石黒謙吾が、15年にわたり構築してきたのがチャート思考。あらゆるものごとを、目先の対応ではなく、公式を定着させていく基本となる考え方で贈る「頭の漢方薬」的な人生指南である。

 その分類王の盟友、Dr.イシグロが、ライフハックブームのなか、「スキル依存症」
に陥り、仕事やプライベートがうまくいかなくなった人々に警鐘を鳴らす。

 脱「右へならえマシン」、目指せ「問題解決の公式化」。

 ――さて本日も、「石黒総研」に1人のライフハック君(以下、[ラ])が訪れ、Dr.イシグロ(以下、[イ])との面談が始まった……。


些末な話題を掘り下げる
通信会社の33歳営業部長

[イ] はじめまして。イシグロ総研へようこそいらっしゃいました。

[ラ] あ。どうも。

[イ] これはまた、仕立ての良さそうなスーツでばしっと決めて、眼鏡もおしゃれでこざっぱり。シャープな印象ですが、お仕事はどのような?

[ラ] 着る物なんて今日の相談には関係ないですよね?端的にいきましょうよ。仕事?企画部ですが、何だと思いました? 

[イ] いえいえ、まずはお尋ねしたまででして、特には。

[ラ] ああ、そうだったんですか。私はてっきり、多くの人を見て推察しているものだとばかり思ってましたよ。先生は、ビジネスコンサルという看板を掲げている以上はね。ふっ。

[イ] そんなことはありませんですよ。わたくしはいつも、まずは先入観を持たずにゆるやかに対話から始めますので。ゆるりと。

[ラ] なんら予測しないで対話を始めるというのは、能率としてどうなのでしょう。いかなるビジネスも、具体的作業に入る前に、可能な範囲で予測を行うことで、パフォーマンスがアップすると考えますがそのあたりはいかがでしょうか?

[イ] はあ、まあおっしゃる通りだとは思います。ただ、わたくしの場合、こう、絡まった糸をほどくように慎重にお話ししたいなと思っていますので。慌てて、早合点することが相談者の方に対して良い結果を生まないものですから。

[ラ] それは御自身のぬるめの行動を肯定するためのいいわけと取れなくもないですよねえ。なぜ、会った瞬間に推察して始めないのかの論拠として脆弱と思われますがそれについて見解は?

[イ] はあ……。まあ特に見解はございません。それでですね、この些末な問題を掘り下げていくのは、本日のご相談とは離れていくわけですから、本題に進みませんか。さて、企画部ということですが、会社はどのような業種でしょうか。