前回の本欄では、「2018年は17年と違う展開の一年になるのではないか」と述べ、約19カ月続いた「適温相場」による株価上昇は長過ぎるのではないかと疑問を呈した。さらに、現在の業績予想に基づけば日本株は割高ではないが、業績水準は非常に高く、振り子がかなり振れたような状態になっているとも指摘した。

 日本株は1月23日の高値から11%強下落し過熱感はなくなった。当面の下値を付けたのだろうか。われわれは今回の急落は行き過ぎた楽観の反動であり、株価は2月中旬の水準で落ち着きを取り戻すだろうと考えている。

 上図で示すように昨年10月の衆議院議員総選挙後の株価の上昇分が今回の下落で打ち消された。昨年の総選挙での安倍政権大勝は外国人投資家の安心感を生み出し、海外市場と比べて出遅れていた日本株に資金が向かった。

 今回の下落局面では安倍政権と黒田日本銀行総裁の政策に大きな変更はない。海外市場の急落に合わせて海外投資家の資金が流出したとみている。その意味で昨年10月の総選挙の時点まで株価が下落したことで株式市場はリセットされた状態であろう。

 株価は3カ月前の水準に戻ったが、企業収益はどうだろうか。17年10~12月期の業績を見ると、今のところ前年同期比で25%を超える増益となっている(下図参照)。上図の黄色い線が示すように企業収益予想は過去3カ月の間も上昇を続けている。PER(株価収益率)は3カ月前よりも低下しており、TOPIX(東証株価指数)で見れば15倍台後半であり、ここからの短期的な下落は限られるだろう。

 しかし、今回の10~12月期決算に米国の法人税引き下げによる一過性の利益が含まれていることには注意すべきだ。米国の法人税は18年から引き下げられるが、それに先立って10~12月期で米国子会社が将来支払うために積み立てていた会計上の「繰延税金負債」が減税のために縮小する。

 この影響は大きい。自動車各社などは今期の業績予想を引き上げ過去最高益を更新すると発表しているが、将来、支払う予定だった税金が減る分を今年度の決算に反映させた会計上の一時的な利益を上乗せしたにすぎない。

 逆に、これによって今後の日本企業の業績は伸び悩むとみている。特に18年10~12月期は反動で大きなマイナスになるのではないかと予測している。

 業績の「伸び」は17年は日本株にプラスに利いたものの、18年は逆風になる可能性があると考えている。短期的な急落は一段落したとしても、今年の株式市場はまだ大きく振れる可能性が高いのではないだろうか。

(UBS証券ウェルス・マネジメント本部ジャパンエクイティリサーチヘッド 居林 通)