残業できない、残業を部下にさせられない環境下で生産性を上げていくには、仕事を圧縮していくしかなかった――。3社の外資系企業を渡り歩き、14年間かけて磨き上げてきた「仕事圧縮術」を公開! 新刊『すべての仕事を3分で終わらせる 外資系リーゼントマネジャーの仕事圧縮術』から、仕事を小さくしていくことで、「スピード」と「質」を最大化する仕事術を紹介していきます。「労働時間の長さ」「生産性の低さ」に対する課題をどのように乗り越えてきたのか、問題解決に役立つノウハウがあります。

仕事の依頼を受けたら、その場で完成イメージを確認する

仕事が速い人が使っている4つの質問で、「やり直し」を防ぐ!岡田兵吾(おかだ・ひょうご)
マイクロソフトシンガポール シニアマネジャー
大阪生まれ。同志社大学工学部卒業後、アクセンチュア(日本、アメリカ)、デロイトコンサルティング(シンガポール)、マイクロソフト(シンガポール)のグローバル企業3社で21年間、シンガポール・日本・アメリカをベースに活躍。これまで、アジア全域の新事業開発、業務改善および組織改革に従事。現在マイクロソフトではシニアマネジャーとして、日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドの4ヵ国のライセンス監査業務の責任者を務める。
 また「アジア組織・改革リード」、「CSR(社会貢献活動)委員」等を兼任し、マイクロソフトでの働き方改革を評価されて数々受賞。世界トップレベルのIEビジネススクール・エグゼクティブMBA取得、同校のアルムナイ・シンガポール支部初代会長。米国PMP(プロジェクト・マネジメント・プロフェッショナル)認定資格保持。
 ダイヤモンド・オンラインにて「STAY GOLD! リーゼントマネジャー岡田兵吾の『シンガポール浪花節日記』」を連載中。人生目標は「ソーシャル・チェンジ」(社会変革)、座右の銘は「STAY GOLD!」。著書に、『すべての仕事を3分で終わらせる 外資系リーゼントマネジャーの仕事圧縮術』(ダイヤモンド社)がある。

 自分では完璧に仕事をしたと思っていても、それが相手の思うところと違えば、当然、やり直しになるわけです。

 やり直しを前提で考えると、できるだけ最小限のやり直しに収めたいと考える脳になります。

 そこで、仕事は依頼を受けたその場で完成イメージ(成果物)を確認することが大切です。

 会議の資料作成を頼まれたら、詳細を最初に決めてから取り掛かります。はじめに「目的」を確認することは当然ですが、「確認したつもり」で伝え切れていないことが多いのです。

 特に、「自分が納得できる仕事をしたい」という完璧主義タイプや自信家タイプの方は、求められているものではなく、自分が正しいと思うものをオーバースペックでつくってしまう傾向があります。

 また、完成イメージを言葉ですべて伝えていても、自分の考えが100%伝わることは絶対にありません。

 MBAの異文化コミュニケーションの授業で、「自分の考えが伝わる確率は60%である」と学んだことがあります。どんなに気の知れた間柄でも、勘違いしたり、聞き漏らしたり、同じ言葉でも違う意味で伝わったりすることがあります。

 つまり、言葉は常に正確に伝わっていないことを前提にしなければなりません。資料づくりでも他の仕事でも思い込みの理解度のまま進めると、必ずダメ出しをされます。仕事を受けた時点で、具体的な仕事の全体像が正しく共有できるまで確認するのです。

そのために私は、4つの質問の型を使います。

[目的]何のためにつくるのか?
[対象]誰に向けてつくるのか?
[体裁]どのようにつくるのか?
[期限]いつまでにつくるのか?

 質問すれば、より詳しい情報が得られて、自分が目指すべき完成イメージが明確になります。質問が多いほど、相手の求めるものに近づくので、いくらでも遠慮なく質問することが大切です。

 質問するとき、私は「What is the end goal of ~?(何が~の目的なのか)」と聞くようにしています。

「そもそも、何のためにこの仕事は必要なのか」を突き詰めて、仕事の目的を確認しています。

 依頼を受けた瞬間から、遅くとも翌日までに、先出しで完成イメージの食い違いが起きないようにすり合わせます。

「人の考えは60%しか伝わらない」ということを心にとめて、一気に仕事に取り掛かる前に、まずは仕事の目的をしっかり確認するように努めましょう。

明確な指示がなければ、確認する

 マイクロソフトでは、「Customer Obsessed」を好んでよく取り上げています。

 訳すと「顧客へのこだわり」「顧客満足へのこだわり」といった意味合いになりますが、なぜ企業が顧客満足にこだわるかというと、スタンフォード大学キャロル・ドゥエック博士の「マインドセット理論」に由来します。

 ドゥエック博士は、大人と子どもの両方を対象とした20年に及ぶ研究の結果、「人格や知性は本人が生まれ持ったものではなく、成長させることができると信じることが、大人にも子どもにも著しい変化をもたらす」という理論を発見しました。

 逆にいうと、「偉大な業績に満足したり、固定観念に縛られたりすることで、成長や夢を追うことをやめてしまう。それは、個人や企業が一瞬でも完璧であると思ったときに起こりうる」という意味になります。

 仕事とは、上司やクライアントへのサービスです。顧客視点を意識したサービスを提供することが必要です。「Customer Obsessed(顧客満足へのこだわり)」を持って、相手が求めているものを提供できるように最善を尽くすのです。

「資料作成よろしく」のひと言だけで仕事を依頼する人も多くいます。相手に求める要件をしっかり示してもらえるといいのですが、この手の人は、自分の言葉が足りないことが相手を困らせていることにまったく気付いていません。

 自分が苦労しないためには、上司やクライアントからできるだけ要望を具体的に引き出す必要があります。そのために、さきほど紹介した4つの質問で、まずは仕事の目的をしっかり確認します。必ず相手の意図を確認しましょう。

 質問しても明確な指示を得られなければ、相手の期待値に最低限応えるための基準をこちらから示すのです。

 言葉だけで確認するのではなく、パワーポイントや過去の資料を活用し、必ず完成イメージのすり合わせをします。

 そうでもしないと、相手の都合で「やり直し」をするハメになるので、仕事の「目的」、そして「完成イメージ」を具体的にすり合わせして見極めていきましょう。


■参考文献 部下の怒声で一念発起! 明日から「残業知らず」になり、「生産性」が爆発的にアップする「仕事圧縮術」