爆発的に増大するデータを収集・分析しようと取り組む企業が増えている。今まで見えなかった顧客の行動特性やリアルタイムの生産状況などを把握し、企業経営の意思決定に生かそうという動きだ。SAS Institute Japanは分析ソリューションの世界的なリーディングカンパニーとして、ビッグデータ時代をリードしている。

吉田仁志SAS Institute Japan
代表取締役社長
北アジア地域統括責任者

 企業が収集・蓄積するデータは急増している。また、ソーシャルメディアの急成長により、インターネットには膨大な非定型データが溢れ、センサーやモバイル機器から、日夜、大量のデータがリアルタイムに生成されている。ビッグデータ時代の到来である。こうした、従来と比べられない大量のデータを分析し、業績を向上させようとする企業も現れている。

 ただ、多くの企業は典型的なデータ分析やレポート、大量データの蓄積にとどまり、ビッグデータの分析によって経営効果を得るという段階に達していない。データを活用するか、あるいはデータに埋没してしまうのか。両者を分けるポイントは、大量データを分析、活用する仕組みや手法にある。
 

 SAS Institute Japan( 以下、SAS)社長の吉田仁志氏は「どんなに多種大量のデータがあっても、いかに素晴らしいデータウェアハウスを構築できても、その情報から価値を導き出せなければ意味がありません。情報をいかに分析し、経営に直結させるかが問われています」と語る。では、価値を生むための分析とは、どのようなものだろうか。吉田氏が続ける。

「経営層には、売上増大、コスト削減といった永遠の命題があります。分析には、こうした経営課題の解決につながる明確な目的を定めることが重要です。たとえば、米国でカジノを運営するハラーズでは、中長期的に安定して収益を増大させることを課題としていました。そこで、顧客の囲い込みを強化し顧客一人ひとりのライフタイムバリューを高めるため、あらゆるゲームマシンに記録された顧客のプレー履歴から、すべての顧客がカジノで損をした金額とリピート率との相関関係を分析しました。その結果、30代の白人女性の場合、負けが900ドルを超えるとリピート率が大きく低下することを発見したのです」

 そこで、彼女らが900ドルを超えておカネを使いそうになると、ゲームの中断を促すためにドリンクなどを提供するようになった。結果として、再訪してくれる女性が増え、収益向上と顧客満足の両立に成功したという。

膨大な行動パターンの
分析により
顧客との関係を強化

 ハラーズの例は性別や年齢層といった属性という切り口で、ある顧客層のライフタイムバリューを最大化するためのアプローチだ。属性に基づくセグメント化は従来から一般的だったが、インターネット上のログやポイントカード履歴、また、社内に蓄積された顧客情報を統合・分析することで、詳細な顧客行動をより正確に把握できるようになり、最近は別の手法を採用する企業が増えつつあると吉田氏は言う。

「属性が同じでも、行動特性がまったく異なる場合がよくあります。消費者の好みが多様化するなかで、この傾向は強まるでしょう。これからすべきなのは、行動に基づくターゲティングです」

 吉田氏が挙げた事例は、米国で花のオンラインショップを展開する1-800-FLOWERS.COMである。