どんな企業でもすぐに売上1億円を達成できる=「すぐイチ」の法則とは?!全国の中小企業800社以上が絶賛!約6年で53期となる人気の「No.1ビジネスモデル塾」を主宰している著者が、この塾で教えている内容をわかりやすく、ストーリー+解説にまとめて1冊にしました。
それが『すぐに1億円 小さな会社のビジネスモデル超入門』です。
今回はこの新刊の発売を記念して、本の中から抜粋、再構成をして紹介します。第1話は女性が経営している「漢方サロン」。売上が減る中、どのように危機から抜け出すのでしょうか?

「月商500万円の店でも、
すぐに売上1億円にします」

(前回まではこちら)

桜子はサロン自慢のゴボウ茶を飲みながら会議室の中をぐるりと見渡していた。内装にも調度品にもお金がかけられているのがよくわかる。そして壁にかけられたパネルの中には、お客様からの手紙が飾られている。

「おかげでやっと子宝に恵まれました!」
「諦めていた2人目を授かることができたのは華恵さんのおかげです!」
お客様と並んで写真に写る華恵は、実に幸せそうな顔をしていた。
「なるほどね……」
桜子がティーカップをソーサーに置いた瞬間、会議室の扉が開いた。

「こんにちは。『漢方・整体サロンHana』のオーナー、藤堂華恵です」
艶とハリのある髪はしっかりとカールされ、ボディラインがわかるぴったりとしたスーツに身を包んでいる。とても40歳には見えない美しさだ。ホームページに掲載されていた情報を思い出し、桜子は「社長が広告塔になれるのはこの会社の強みだわ」と心の中でつぶやいた。

「猿渡さんから、遠山さんは凄腕のコンサルタントだと聞いております」
華恵はテーブルを挟んで向かいのソファに浅く腰をかけた。
「それは光栄です。まあ、凄腕という表現が適切かどうかはわかりませんが、結果を出してきたことは事実です。でもそんなにかしこまらないでください」
桜子は小さく会釈をする。

「今週のどこかでいらっしゃるとは言われていましたが、まさかこんなにすぐお会いできるなんて……」
桜子は再びティーカップに口をつけてから、にっこり笑って華恵を見た。
「会社を立て直さないとまずい状況なんですよね」
「え?」
「サロンの評判はいいようですから、きっと忙しいのでしょうけど、思ったほど利益は出ていないんじゃないでしょうか。顧客との継続的な関係も築けていないから、常に新規顧客の獲得に必死になっている……。それが悩みの種だとお見受けします。確かに、このままでは将来の展望が描けませんよね」

図星だった。
「なんでそこまで……」
「どうして、そんなことがわかるのか、不思議?」
桜子はくすっと笑った。
「す、凄腕コンサルタントって本当なんですね……」
「ええ。とにかく、Hanaを売上1億円の店に、私が変えてみせます」
まっすぐに見据えた桜子の瞳に吸い込まれてしまいそうで、華恵は思わず目を伏せた。

「で、でもうちの店は2店を合わせた平均月商が500万円なんです。つまり年間の売り上げ、年商は6000万円です。それですぐに売上1億円なんて、本当にできるんでしょうか。確かに1億円は目標ですが、ここ3年は横ばい……というか微減で、どんどん遠ざかっています。もうどうしたらいいかわからなくなってしまって……」
矢継ぎ早に言葉を発する華恵を見て、桜子はふふっと小さく笑った。

「儲けるなんて、簡単よ。すぐに売上1億円、お約束します」
そう自信を持ってきっぱりと言い切ったのだ。

その瞬間、華恵は「この人ならなんとかしてくれるかもしれない」と心から思えた。大げさだが「雷に打たれたような」という比喩がぴったりなくらい、体に衝撃が走ったのだ。

「どうしますか?」
桜子の言葉に、
「どうかお願いします!遠山先生がおっしゃる通り、うちの会社はピンチです。でも、絶対にあきらめたくないんです。先生、解決策を教えてください」
と、自慢の富士額をテーブルにこすりつけるようにして、華恵は懇願した。
「華恵さん、顔をあげてください。私のことは桜子、でいいですよ」
「桜子先生」
「先生っていうのも、私はあまり好きじゃないんです。せめて“さん付け”にしていただけますか」
「桜子さん」
「はい。それと、ひとつ約束をして欲しいんです。私が言うことは絶対に実行してもらいたいの。守れますか?」
「もちろんです!」
桜子から差し出された右手を華恵が強く握り返すと、桜子は笑いながら、
「あら、握手は成功した時にしましょう。まずは直近のBSとPLを見せて欲しいんですが」
「え!?は、はい」
耳を赤くして手をひっこめる。すでに桜子のコンサルはスタートしていたのだ。

儲からない原因は看板にあり

BSとPLをめくりながら、桜子は華恵に次々と質問を投げかけた。答えられないと、その柔和な顔に影が差す。なんというプレッシャーだろう。
「これで、だいたいはわかりました」
桜子は資料をパタリと閉じて言った。

「華恵さん、この店の問題はどこだと思いますか」
桜子はスマートフォンを取り出し、「漢方・整体サロンHana」の外観を映した画像を華恵に見せる。
「うちの店ですね……。でも、どこが問題なのでしょうか?」
華恵は画面をまじまじと見つめながら首をかしげている。桜子は苦笑いした。
「ヒントは看板です」
「看板?看板はけっこう自慢なんです。遠くからでもうちの店の存在が際立つように、とにかく大きく作ってもらったんです。けっこうお金がかかったんです」

華恵はまるで自分の世界に入り込んだかのように看板への想いを語り続ける。桜子はその様子を困ったような顔つきで見ていた。
「じゃあ、もうひとつ質問します。自慢だと華恵さんがおっしゃるこの看板、効果はあったんでしょうか」
じっと、華恵の目を見つめる。

「効果ですか……。病院で不妊治療をしても、どうしてもダメだったというご夫婦が、もう何組も無事に子宝に恵まれています。皆さん、この看板を見て、思い切って来てみたとおっしゃっています」
桜子は「ふう」とため息をつきスマートフォンを自分のほうに向けると、「不妊にお悩みの方!」の部分を拡大して再度、華恵に見せた。
「まず、儲からない原因のひとつはここにあります」
「え?なぜでしょうか?」
華恵は眉をひそめた。自信を持って作ったものを真っ向から否定されたのだから無理もない。
桜子はスマートフォンをテーブルの上にそっと置いた。華恵は目をパチクリさせていまだ状況が飲み込めない、といった様子だ。
「華恵さん、高級住宅街のど真ん中に建っていて、こんなに大きく『不妊にお悩みの方!』なんて書かれたら、普通は入りにくいと思いませんか?」

華恵はハッとした顔をしたがそれでも反論を試みた。
「で、でも、実際にうちに来たことで子宝に恵まれたご夫婦がいるんですよ」
「うん。そうですね、赤ちゃんを授かる手助けができる華恵さんのお仕事は、素晴らしいと思います。そこに惹かれてやってくるお客様も、少なからずいらっしゃるでしょう」
「そうなんです。私、それにはものすごく自信があるんです」
さっきとは打って変わって笑顔になる華恵を横目に、桜子は話を続ける。
「でも、よく考えてみてください。ここに来ることイコール『私は不妊に悩んでいます』って、ご近所中にアピールしているようなものなんです。だって誰が見ているかわからないんですよ。現にお客様は『思い切って』とおっしゃっていたんでしょう?」
「そう言われると、確かに……」
「誰だって、噂のネタにされるのは嫌ですから。入りたくても入れなかった人、いると思いますよ。さっきも店に入るなり『不妊でお悩みですか?』なんて声を掛けられましたけど、あれで面食らって帰ってしまった人もいるはず。これがひとつめの問題点です」
華恵は悔しそうに唇を噛む。

(続く)

【登場人物紹介】

遠山桜子[とおやま・さくらこ](45歳)「すぐに売上1億円を達成させる」敏腕コンサルタント
「儲けるなんて簡単よ」が口癖。数々の企業にビジネスモデル(儲かる仕組み)構築の重要性を説いている。類まれな分析力とアイディアの持ち主で、三度の飯よりビジネスが好きというほどの自称ビジネスオタク。隙のない風貌から、近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、実は愛情深く、人を喜ばせることが好き。

藤堂華恵[とうどう・はなえ](40歳)漢方・整体サロンHanaオーナー
不妊で悩む女性を助けたい一心で、女性の悩みに応える漢方・整体サロンを横浜で2店舗経営。元ミスキャンパスだった美貌を生かし、自らが宣伝広告塔となり雑誌やチラシで集客はできているものの、儲かってはいない。年商6000万円。