日本企業はAI導入、データ解析で危機的に遅れている

今回は、サンフランシスコを拠点に主に米国のスタートアップへの投資を行うベンチャーキャピタル(VC)、Scrum Venturesの創業者兼ジェネラルパートナーの宮田拓弥氏をお迎えした対談をお届けします。デジタル事業やベンチャービジネスの本場であるシリコンバレーでモビリティ、Fintech、IoT、VR、コマース、ヘルスケアと、50社を超えるさまざまな分野のスタートアップへの投資を行う宮田さんに、日米のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタルの略。事業会社がスタートアップやベンチャー企業などに投資を行うこと)のトレンドの違いや、日本におけるCVCの課題などについて、意見を聞きました。

デジタルイノベーションの必要性から
米国企業のCVC投資が本格化した

平井  宮田さんは米国のテックスタートアップに投資するVCを経営されていて、これまでに、コマースやヘルスケアからIoTまで、実に幅広いジャンルのスタートアップに投資をしていらっしゃいます。

宮田 もう起業して6年目になりますね。

平井  次々とイノベーションが生まれるシリコンバレーの現地情報や、米国のビジネスの潮流にも通じていらっしゃいますので、まずは日米のVCのトレンドの違いなどをうかがえればと思います。日本におけるVC投資は、以前に比べれば増えてきたとは言っても、投資金額も案件の数も米国と比較すると、圧倒的に少ないです。VCの投資額は日本がやっと2000億円を超えたくらい、対して米国は7兆円以上の規模といわれていますから、差は歴然としています。

宮田 米国VCの大きなトレンドのひとつとしては、投資件数は2015年の後半から下降傾向に入っています。ただし、トータルの金額は増加傾向にあります。なぜならソフトバンクの10兆円ファンドが設立されたから。あと、ソフトバンクに続いて、米国のVC業界で金額の大きいものと言えば、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)、企業の投資といったところでしょうか。

 日米VCのトレンドの大きな違いとしては、日本でのイグジットの目標が主にマザーズでの上場であるのに対し、米国ではM&A目的が主流であることが挙げられると思います。米国の企業はここ3年で本格的にCVC投資に乗り出すようになってきました。それも単純投資でなく、買うこと自体が本格化してきた。これまではアマゾンやグーグルなどのテックカンパニーによる投資が大半でしたが、非テック企業も乗り出すようになってきたんです。どの企業も本格的なデジタルイノベーションのために、自分たちの事業に必要だからM&Aするという流れになっています。