福岡ソフトバンクホークス・和田毅投手による練習論。もともとは「ふつうの野球少年」でしかなかった彼が、東京六大学野球奪三振記録、新人王、MVP、最多勝、最高勝率……といった結果を出せたのはなぜなのか? 球界きっての「思考派」による連載、今回のテーマは「状況判断をしながら、考え続けること」。(構成/田中周治 写真/繁昌良司)

ソフトバンク和田投手が明かす「マウンドで投手が考えていること」

目の前のバッター「以外」のことも考える

「ピッチャーはどんなことを考えながら投球しているのですか?」

 こんな質問を受けることがある。この連載のメインテーマは「練習について」であり、練習とは言ってみれば「事前の準備」だ。とはいえ、ひとたび本番のゲームがはじまってしまえば、動き続ける試合状況のなかで、考え方を柔軟に切り替えていくことが必要になる。テレビなどの試合中継では、この部分はなかなかな伝わりづらいようだ。

 そこで今回は、マウンドに立っているピッチャーの心理状態について語ってみようと思う。ただし、これはあくまでも僕個人の経験に基づいたものでしかなく、すべてのピッチャーがそうだというわけではないことは強調しておきたい。