震災以降、建物の地震対策としてニーズが高まっている「免震」や「制震」。法で定められた基準よりさらに高い耐震性能を叶えるものだが、そうした構造に欠かすことができない意外なものが脚光を浴びている。

 現在、大手ハウスメーカーでは免震・制震タイプの住宅販売が絶好調だ。ミサワホームでは、2010年度に販売した住宅のうち制震タイプは1割以下だったが、震災以降は5割以上にまで伸びている。「制震装置の導入は40~50万円のオプションで、以前はあまり興味を持たれなかった。しかし今は中高級商品に標準装備したのと、それ以外でもオプション装備を積極的にする客が増えた」という。

 そんな免震・耐震住宅で、まさに縁の下の力持ちのごとく活躍しているのが、じつは特殊なゴムなのだ。高減退ゴムと言われるこのゴムは、特殊な原料配合により、振動や摩擦を吸収する性能を持つ。

 そうした特殊なゴムを金属などと組み合わせて造った装置を、床下や壁の中に入れて建てる。そうすることで、大地震が起きた際に揺れを20~50%程度軽減する。もちろん余震にも効果的だ。じつは度重なる揺れが建物に与えるダメージは大きく、余震が繰り返されるとドアが開かなくなったり、壁が歪んだりする。そうした被害も特殊ゴムを用いた装置が防ぐのだ。

 高まる人気を受け、大手ハウスメーカーに制震装置をOEM供給してきた住友ゴムは、新たにオリジナル品を打ち出した。レース用タイヤで培った技術を駆使し、揺れを最大70%低減。従来品は一戸で10基ほど必要なところ同社製品は4基で済むため、低価格で施行できるのも特徴だ。今年は5000戸、15年には2万5000戸の住宅向けに販売を計画する。

 ビルやマンションに使われる免震装置で約50%のシェアを占めるブリヂストンは、企業がBCP(事業継続計画)の観点から免進化を進めていることに目を付け、工場や事務所、大型倉庫に注力して販売拡大を狙う。

 国内向けだけではない。制震装置最大手の東海ゴムは海外にも進出する。建設ラッシュが続く中国では2008年の四川大地震で大きな被害を出して以来、地震対策の重要性が認知されるようになったが、その対応は遅れている。そのため同社は昨年秋、中国・北京の学校に制震装置が採用されたのを手始めに、公共施設を主なターゲットにして現地の設計工事会社と連携し、中国での展開を加速する計画だ。

 防災意識の高まりはしばらく収まりそうにない。ゴムメーカーも思わぬ需要に攻勢をかける構えだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

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