本連載では、話題の新刊『最先端科学×マインドフルネスで実現する 最強のメンタル』の内容から、エビデンスに基づいた最新科学の知見をもとに、現代人が抱える2大メンタル問題「ストレス」と「プレッシャー」を克服し、常に安定して高いパフォーマンスを発揮するための方法をお伝えしていく。

悪いイメージが消えていく「科学的な瞑想法」とはなにか?

イメージの力で潜在能力を引き出す!

 昔からビジネスやスポーツ分野では、いかに「成功イメージを脳裏に焼きつけられるかが大事だ!」という考えがあります。これは間違ってはいないと思います。

 心理学分野では、自分に対するイメージのことを自己イメージやセルフイメージと呼び、自己イメージが悪いとなにをやってもうまくいかないという考え方があります。

 例えば、過去に大事なプレゼンで毎回失敗し、苦い体験をし続けてきたビジネスパーソンの場合、「次こそは!」と胸に誓い、本番に向けて徹底的に準備をするものの、不安がぬぐえないはずです。

 それは、顕在意識では、「これだけ準備をしたし、今度は大丈夫だ!」と思いながらも、潜在意識の方では、「またどうせダメに決まっている…」と、あきらめている自分、失敗している自分を想起してしまっているからです。

 この矛盾する感情が、目に見えない不安感につながっていると考えられています。

 例えば、ダンサーであれば、振りつけを完璧に覚えているのに、毎回同じところでミスをしてしまうケースを耳にします。これも、潜在意識下で「また失敗してしまう自分」をイメージしてしまっているからだと考えられます。

 こうしたケースでは、顕在意識でいくら頑張っても、どうしても限界が出てきてしまいます。そこで役に立つのが、潜在意識に働きかけるイメージトレーニングなのです。

 極端な話、良いイメージへと塗り替えること以外に、悪いイメージを消し去る方法はありません。

 イメージトレーニングなら散々やってきたが、あまり効果が得られなかったと感じる方も多いと思いますが、その原因は、脳の覚醒レベルが関わっていると考えられています。

 脳の覚醒レベルが高いベータ波が優位な状態では、思考の方がメインで働き、イメージや創造性においてはあまり適した状態とはいえません。この状態は、仕事をバリバリこなすのには適した状態ですが、イメージトレーニングを行うには不向きなのです。

 そこでまずは、覚醒レベルを下げ、イメージトレーニングに適した脳環境にする必要があります。イメージトレーニングに適した状態は、脳波でいえば、シータ波からアルファ波にまたがった領域(6~10Hz)です。

悪いイメージが消えていく「科学的な瞑想法」とはなにか?

 この状態は、アルファ/シータ状態と呼ばれ、深い瞑想状態、三昧の境地とも称され、イメージが最も鮮明に湧く状態だと考えられています。

 このアルファ/シータ状態は、イメージが定着しやすい状態であり、この状態でのイメージトレーニングは高い効果が期待できると考えられています。

 通常の目を閉じた安静状態は、アルファ波が優位なリラックス状態です。このアルファ波優位な状態からさらに覚醒レベルが下がり、シータ波に近づいた状態が、アルファ/シータ状態なのです。

 アルファ/シータ状態は、その状態をつくり出す以上に、その状態を維持するのが難しいものでもあります。

 といいますのも、覚醒レベルが下がり過ぎれば、今度はデルタ波と呼ばれる睡眠中に優位に現れる脳波成分が強まってしまうからです。座禅で例えるなら、警策で叩かれないスレスレの状態がアルファ/シータ状態といえます。

 感覚的には、眠るでもない、起きるでもない、ふわふわした半覚醒状態、シャーマンの変性意識状態に似ているともいわれています。

 この原理は1977年に生物学者のエルマー・グリーンによって発見され、1989年に医師のユージン・ペニストンによって臨床的進化を遂げた理論です。

 期待できる効果としては、気分、不安障害、PTSD、アルコール依存症の改善、芸術、ミュージシャン、ダンサーのパフォーマンス向上などが挙げられます。

 一般的には、アルファ波とシータ波を音に変換し、クライエントに今の脳波状態をフィードバックさせて行うニューロフィードバックによるトレーニングが有名です。