まず、私が関心をもった2つの調査報告を紹介しよう。

 JETROの調査報告書「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査・中国、香港、台湾、韓国編(平成22年8月~9月、対象1105社)」によれば、調査を受けた企業の68.6%が、平成22(2010)年度の営業利益は「黒字」と回答している。それよりもっと新しい調査では、中国に進出した日系企業の62.1%が2011年度の営業利益見込みを「黒字」と見ている、という。つまり、海外進出の日系企業の大半が黒字を確保しているのだ。

 もう一つの調査報告は、産経新聞社が発表したアンケート調査だ。主要企業116社を対象に行ったものだが、「成長が著しいアジアを有望市場ととらえ、新興国に吸い寄せられている企業は多い」と、同報告はまとめている。それによると、平成24(2012)年度の海外事業計画で「拡大する」と回答した企業の割合は、7割近くにのぼるという。企業の海外シフト重視が否応なく印象付けられた。

インドと中国を比較した好著

 そんなかで、私は一冊の本に関心をもった。『インドvs.中国』(浦田秀次郎、小島眞、日本経済研究センター編著、日本経済新聞出版社)だ。世界経済をけん引し、今世紀の最大の市場にもなる可能性を持つこの2つの新興国の実力比較を狙う同書は、インドと中国の持つこれからのビジネスチャンス、克服すべき課題、日本の採るべき戦略、そしてそれぞれの強みと弱みを「一目瞭然」にしようとした。

 中には、結構面白いものがある。例えば、「インドが中国に学ぶべき点は何か」という章では、「内外無差別」のインドと「外資逆差別」の中国が接近する新しい動きを紹介している。中国を「インフラ大国」と捉えるところも、その中国を追っかけるインドを描いているのも面白い。