「いったい何歳から子どもにはスマホやタブレットを持たせてもよいのか。動画やゲームに依存してしまったり、成長面で問題が出る心配はないのか」。せがまれればためらいながら使わせてはいるものの、漠然と不安と抵抗を感じている親は多い。世界中の子どもの親が直面するこの問題に、科学的にはっきりとした指針はないものなのか。
世界的サイバー心理学者として知られるメアリー・エイケン博士が、デジタル・テクノロジーが人間にどのような影響を与えるか、とりわけ子どもの成長への影響を発達段階ごとに見ながら、子育ての中での影響を科学的にまとめた話題の新刊『サイバー・エフェクト 子どもがネットに壊される――いまの科学が証明した子育てへの影響の真実』から、一部抜粋して紹介する。

何歳から、どんなディスプレイで見せるのが良いのか?

 子ども向けのタブレットやアプリの宣伝においては、必ずと言ってよいほど「インタラクティブ」性に言及される。これは親の間で一種の流行語になっているが、それは彼らがどこかで、子どもの学習には受動的な観察よりも、「インタラクション」のほうが効果的だと見聞きしたからだろう。

 そして実際に、インタラクティブ性の高いアプリを使うことは子どもにとって、テレビを見るのとはまったく違う体験になるが、それはより優れているという意味ではない。

 タブレットのインタラクティブ性は、幼い子どもにとっては、より注意力を奪い、過剰な刺激を与えてしまうものになるおそれがある。どんな画面でもそれに接する時間は一緒、というわけではないのだ。子どもにとって最善のコースとは、どのようなものだろうか?

 この点については、多くの意見が表明されている。私が主に懸念しているのは、何百万人という親が蚊帳の外に置かれるなかで、行動科学や社会科学に基づく形ではなく、企業のマーケティング担当者やテクノロジー業界の主導で、新しい習慣が生まれてしまうのではないかという点だ(「科学的根拠に基づく」子ども向けコンテンツが氾濫しているもかかわらず、それが実際の発育にどのような影響を与えているかについての研究がほとんど行われていないのは、皮肉と言うしかない)。

 アプリ開発者の主張に対するガバナンスや、サイバー倫理観がなければ、子どもの成長に関するサービスは「何でもあり」の状態になってしまい、親の混乱に拍車をかける結果となるだろう。彼らが正しい決断を下せるように、こうした新しい機器やアプリ、テクノロジーを評価することはできないのだろうか? おもちゃ業界には期待できないだろう――なにしろ彼らは、新生児の顔の前に喜んでアイパッドをぶら下げるような人々だ。

 その一方で、非常に保守的な態度を取る人々もいる。たとえば子どもの発育に関する専門家で、NPO「ムービング・トゥ・ラーン」の創設者としても知られる発達期作業療法士のクリス・ローワンは、次のように、子どもにタブレットや携帯電話の画面を見せるのを制限することを推奨している。

〇3~5歳児の場合、テレビの視聴は1日1時間に限定する。
〇13歳未満の子どもに、ハンドヘルド機器やビデオゲームを与えることは勧められない。また13~18歳までは、ビデオゲームは1日30分以内に制限することが望ましい。

 ローワンによれば、いまや子どもの3人に1人が、発達が遅れた状態で学校に入学しており、識字能力や学業成績に悪影響が出ている。ムービング・トゥ・ラーンの主張は過激に思えるかもしれないが、問題の兆候は表れ始めている。