今年1月の東京都の1世帯当たりの平均人数は1.99人。初めて2人を下回りました。1人暮らしの高齢者や独身者の増加が影響しているようです。そういえば、このところ盛んに流れるのが「孤独死」のニュース。元タレントの山口美江さんをはじめ、都会の片隅で人知れず亡くなっていく人々の事件が頻繁に取り上げられるようになりました。

日本の自殺死亡率は世界でもダントツに高く、米国の2倍で英国の3倍の水準。毎日、90人もの人が自殺で亡くなっていると言われています。その背景に、社会全体に広がる「孤独」の影があることは否めません。

そんな風潮とは裏腹に、最近の若者たちの間では新たなコミュニティが生まれています。この頃、話題の「シェアハウス」です。「会社」より「プロジェクト」、「結婚生活」より「仲間との暮らし」。「もう大きな政府には期待できない、自分たちの共同体を作ろう」と動き始めた彼ら。

最近、刊行された『大人のためのシェアハウス案内』(ダイヤモンド社)でもこうしたシェアの達人たちを数多く取り上げています。今回は、その中の1人、「昼夜逆転 トーキョーよるヒルズ」編集長の高木新平氏こと「シンペー」と、社会学者宮台真司氏が対談。既成概念を超えた新世代の生き方を探りました。(聞き手/みんなでひとり暮らし。委員会)

たった1年で大企業を辞めてしまう
若者たちの頭の中とは?!

“下り坂時代”の若者が切り拓くライフスタイル最前線<br />宮台真司が話題のシェアハウス「よるヒルズ」に迫る宮台真司(みやだい・しんじ)/社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。1959年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。社会学博士。権力論、国家論、宗教論、性愛論、犯罪論、教育論、外交論、文化論などの分野で単著20冊、共著を含めると100冊の著書がある。キーワードは全体性、ソーシャルデザイン、アーキテクチャ、根源的未規定性、など。

宮台 ここ3~4年、「シェアハウス」のムーブメントが急速に広がっているよね。『大人のためのシェアハウス案内』以外にも、NHKの番組や雑誌「BRUTUS」(マガジンハウス)など、さまざまなメディアで盛んに取り上げられるようになった。

 今、既存の共同体は「死」に瀕しているよね。例えば「家族」。OECDの国際的社会指標やさまざまな調査からもわかることだけど、日本人ほど親や家族を尊敬、尊重しない国民は世界に類を見ないんだ。

 家族だけじゃない。自治や相互扶助を目指す共同体はおしなべて失われている。街のコンビニ化、スターバックス化がますます進み、平時には他人を頼らなくたって、いくらでも快適で便利な生活ができる。だが、非常時にはどうだったのだろうか。震災の時に起こったことを考えてみてほしい国や政府といったシステムに依存できなくなったとき、「何が本当に必要なのか」が問われたのではないだろうか。

 そんな中、自分のゼミ生にシェアハウスの住人がいることもあり、僕もシェアハウスの動きについては関心を持って見つめてきたんだ。生存、生活を自分たち以外の手に依存しない「自治」発想の共同体なりうるんじゃないかと。

 ところで、シンペーくんは「トーキョーよるヒルズ」でどんな人たちと暮らしているの?