分譲マンションがけん引してきた不動産価格上昇に変化が生じている。国と都が進めるアジアヘッドクォーター特区がその要因だ。特区とその周辺には、狙い目エリアが控えている。

 3月27日発表の1月1日現在の地価公示で、全国的に地価上昇が続いていることが認められた。大都市圏での「地価上昇」は止まらず、地方都市では商業地の平均地価が26年ぶりに上昇した。

 しかし、この上昇は分譲マンションがもたらしたものではない。20世紀には、マンションブームが起きてマンション価格が上昇すると、それが地価上昇を引き起こした。マンションの売れ行きが地価を左右することもあったわけだ。

 ところが、今回はマンションブームは起きていない。地価上昇は別の理由で起きている。

 その背景には「外国人の増加」がある。訪日外国人旅行客(インバウンド)が増えることで、消費も拡大。その結果、地方都市の商業地地価が上昇した。

 「外国人の増加」による影響は、それだけではない。これからの日本では、外国人の中長期滞在者が増加する動きが予想されている。それも東京中心部の地価を押し上げる要因となっている。

 今、日本政府と東京都は、外国人の滞在者を増やしてゆこうと考えている。それは、都心の数カ所に「アジアヘッドクォーター特区(構造改革特別区域)」を制定し、「5年間で500社以上の外国企業を誘致」するような外国人呼び込み方策を打ち出していることでも明らかだ。

 外国企業を誘致するためには、オフィスビルをさらに増やす必要があるし、外国人のための住居も必要だ。具体的には、新たなオフィスビルの建設、国際基準の賃貸マンション(家具付きのサービスアパートメントを含む)の建設、ホテルの建設が求められる。

 この動きに呼応し、現在、不動産会社はマンションの分譲だけでなく、賃貸収益や宿泊料を稼ぐことができ、将来的にファンド等に売却するという出口も用意されているオフィスビル、商業ビル、賃貸マンション、ホテルの開発・運営に積極的だ。

 いずれも分譲マンションとして販売するより収益性は高い。だから、マンション用地としてよりも高い値段で土地を購入できる。

 こうして、「マンションブームが起きているわけでもないのに、都心部の土地が値上がりする」という現在の状況が生まれているわけである。

 アジアヘッドクォーター特区の計画は、2020年東京五輪の後も続いてゆく。新東名高速道路が20年度内を目指して全線開通、リニア中央新幹線も27年に開通を予定している。

 一方で、老朽化した首都高羽田線や都心環状線が造り替えられるなど、インフラ整備も進む。となると、「東京五輪まで不動産価格が上がり、その後下がる」という予測がいかに空虚なものかが分かる。