今後、産業を大きく変える可能性を秘めた宇宙ビジネス。しかし、最大の障壁は宇宙への輸送コストだ。イーロン・マスク率いるスペースXはそこに挑戦し、価格破壊を実現しようとしている。そのカギを握るのが「ロケットの再利用」だ。火星行きを実現するために、どうしても必要なこととは?清水建設宇宙開発室、JAXA出身の宇宙ビジネスコンサルタント・大貫美鈴氏の新刊『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』から、内容の一部を特別公開する。

人類が火星行きを実現するために、<br />どうしても必要なこととは?

宇宙に行くコストをロケット再利用で大幅ダウン
最大の障壁に立ち向かうイーロン・マスクの挑戦

 宇宙の位置や環境を使うことによって、地球上ではできないことが可能になる。これこそが、宇宙ビジネスへの大きな注目点であることは言うまでもありませんが、だからこそ、ひとつのネックがあります。それは、宇宙に行くコストです。

 かつてのNASAのロケットの打ち上げに比べると、イーロン・マスク率いるスペースXのロケット打ち上げコストは飛躍的に下がり、ロケットの価格破壊と言われているほどです。

 しかし、それでもまだまだ巨額の費用がかかることは間違いありません。

 スペースXにはバックログと呼ばれる契約した打ち上げリストに約50の受注残がありますが、そこには顧客の存在があります。通信会社の通信衛星、NASAの国際宇宙ステーションへの貨物便、軍の軍事衛星までもが受注されています。

 こうした顧客との契約において、もし顧客が負担する費用がこれまでよりも格段に安くなればどうなるか。もっともっと需要は大きくなるでしょう。そうすれば、ロケット打ち上げサービス受注も増えることになります。

 そこで今、取り組みが進んでいるのが、このロケット打ち上げサービスのコストをさらに大幅に下げること。なんと2ケタ下げることを目標にしています。

 一体何をするのかといえば、ロケットを再利用するのです。一度打ち上げたロケットをそのまま廃棄するのは使い捨てロケットです。これを再利用型に変える。自動車のように燃料を入れ直して再利用するようなロケットにできないか。そのための取り組みが進んでいます。