日本サッカー協会での「組織の問題」はどこでも起こりうる

 さて、まもなくサッカーのワールドカップである。気持ちはすでに本選なのだが、急転直下の事態で大きな話題となった日本代表のハリルホジッチ(ハリル)監督の解任から西野新監督の就任までについては、どんな組織にも起こりうる重要な問題を含んでいたので、この機会に改めて振り返ってみたい。

「選手と監督の間に“多少”コミュニケーションの問題があった」は、解任理由だったのか

 日本サッカー協会田嶋幸三会長は、ハリル氏を監督から解任する理由として、「選手と監督の間に“多少”コミュニケ―ションの問題があった」ことを挙げていた。

「多少」を文字通りに解釈すれば、「多少のことで監督を変えるな!」という人もいたことだろう。だが、この「多少」は実のところ「大きな」と同義である。選手からの突き上げと思われないようにという、選手をおもんぱかった言い方であり、監督を変えるだけの理由があったのだと理解できる。だから今回は、この「多少」については取り沙汰するつもりはない。ハリル氏や海外メディアに翻訳されたときに正しく意味が伝わったかは「若干」心配ではあるが……。

西野朗新監督の就任は、
「意思決定の方法」として正しかったか

 日本サッカー協会の技術委員長だった西野朗氏が新監督に選ばれたのは、「解任を決定→時間がないので、新監督は西野氏しかない」という筋道であり、企業のトップの交代などでも、よくある話ではある。ただ、これは意思決定の方法として正しかったのだろうか。

 例えば監督人事について、次のような考えを持つグループがあったとする。
 
 ハリル氏解任に賛成。A氏を推薦:5人 
 ハリル氏解任に賛成。B氏を推薦:7人
 ハリル氏解任に反対:8人
 (全部で20人)

 この場合、A氏を推薦するのは5人、B氏を推薦するのは7人だから、ハリル氏支持の8人に及ばない。「代表監督に誰がよいか一番投票の多い人を選ぶ」であれば、「ハリル氏続投」というのが数の上では答えとなる。

 しかし、「ハリル氏続投か解任か」だけを問えば、ハリル氏反対は12人、賛成が8人だから、さきほどの結果とは逆に、「ハリル氏解任」となる。そしてA氏とB氏の比較では、B氏の支持が多く、B氏に決まる。

 ところが、A氏を推薦している5人に、B氏とハリル氏とではどちらがいいか、改めて問えば、どうなるかは分からない。